薬局薬剤師を取り巻く重要な課題が議論されている。その中でも大きな話題となっているのが、緊急避妊薬のOTC化や零売のあり方である。これまで薬局薬剤師の武器となる取り組みの推進には、常に規制改革推進会議や医師会などの壁が立ちはだかってきた。セルフメディケーション推進のカギを握るスイッチOTC化は難産を極め、高脂血症治療薬のスイッチ化では販売ハードルの高さに撤退する企業も出て、実質的に塩漬けとなってしまった。その後も思うようにスイッチ化が進んでいるとは言えない。
処方箋なしで医療用医薬品を薬局で購入できる零売も、一部の不適切事例を背景に厚生労働省検討会で議論され、法制化する方向になりつつある。今後は「やむを得ず販売を行わざるを得ない場合」の範囲が焦点となるが、薬剤師の零売に対する立場を明確にしないと、その範囲によっては貴重な職能発揮の手段が狭められてしまう懸念もある。
緊急避妊薬のOTC化も産婦人科医会などの強い反対によって棚上げとなっている。現在、試験的運用が提案されているが、本来の姿からは遠い。
それでも、OTC化を求めて産婦人科医らの市民団体が繰り返し声を上げ、薬剤師の有志団体による要望書提出の動きもあった。緊急避妊薬のOTC化はパブリックコメントの97%が賛成だった。
広く国民にアピールして世論の支持を得ることが重要で、薬剤師が結集して声を上げる動きが出てきたことに大きな変化を感じた。
また、未曾有のコロナ禍では薬剤師の役割がクローズアップされ、軽症者の自宅療養において解熱鎮痛薬によるセルフケアが焦点となった。これほどOTC薬が注目されたことはなく、公衆衛生への貢献を示す好機となったが、国民が薬局を頼ろうと思える下地が十分にできていなかったかもしれない。
一方、医薬分業への強い批判から、患者のための薬局ビジョン策定、調剤報酬上のかかりつけ薬剤師、健康サポート薬局、認定薬局制度と、一連の政策が次々と打たれてきたが、各種調査ではいずれも国民への認知度は低く、国主導の薬局改革には限界があることもうかがえた。
今後も薬剤師の職能に関わる様々な動きが出てくるだろう。その時に慌てて対応するのではなく、自らの職能として何を守るべきなのか、どこまで規制・規制緩和を認めるのか、明確な青写真、薬剤師像を描き、その実現に向けて主張していくことが必要になる。
職能が危機にさらされた時、どんなに理不尽な主張でも根拠をもとに反論しなければ、国の検討会などの場で押し切られてしまう。利害関係者の理解を得るためには、重労働だが粘り強い説得が大事になる。こうした積み重ねの先に、地域の医薬品供給に貢献する本当の薬剤師の活躍が見えてくるのではないか。