製薬企業との協働モデルで成果‐丁寧な対応で要望実現
医薬業界を中心に翻訳・メディカルライティングなどを手掛けるアスカコーポレーションは、製薬企業など依頼者の要望を解決するために、話し合いながら翻訳の品質水準などについて一定の合意を得た上で翻訳作業を進める「協働モデル」を推進している。同社は、中外製薬と取り組んだプロジェクト「医薬品開発業務を迅速化するための機械翻訳の協調的開発と運用」で、翻訳にかかる時間を人手翻訳と比べ約4割削減するといった成果を挙げ、同様の取り組みを広げていくことになった。
中外製薬とのプロジェクトは今年、アジア太平洋企画翻訳協会(AAMT)が機械翻訳(MT)システムの実用化の促進、実用化の研究開発への貢献を顕彰する「AAMT長尾賞」を、中外製薬と共同受賞するに至った。
同プロジェクトに携わったソリューション事業部の渡邉奈生プロジェクトマネージャーは「MT導入の目的は治験実施にかなう品質の翻訳を短時間で行うことにある。治験実施、承認申請に必要な関連文書の翻訳を一日でも早く仕上げてほしいとの声は強まっており、今回の成果はこのニーズに応えた」と説明する。
プロジェクトでは、治験実施計画書を対象に、翻訳精度の高いカスタマイズMTを開発し、翻訳作業にどこまで求め、何を求めないかといった品質水準を設計し、両社で合意した上で進めた。
その結果、翻訳にかかる時間は、人手翻訳と比べ、MT+ポストエディット(PE)では約4割削減された。作業指示書の更新やフィードバックなど翻訳者とのコミュニケーションを図ることで、作業スピードを落とさず遵守すべき品質を保持することができた。ここまで製薬企業と協働しながら翻訳を行ったのは初めてという。
「AAMT長尾賞」の受賞につながったこの成果をテコに同社は、同様の取り組みを推進する。
プロジェクトに携わった同事業部技術担当の早川威士氏は、「今回の新たな手法では顧客とベンダーという立場を越えて協働し、互いに求めるゴールを明確にしてMTの導入を試みた。成果についてはエビデンスベースで、データに基づく根拠を設定した。MTの性能が良いのはもはや前提であり、手法とゴールに納得して運用を進めれば良い成果が出るはず、との仮説で進めたが、その結果を確認できた」と説明する。
渡邉氏は「運用していく中で課題が生じるのは当然。どうすれば課題を解決できるのか、お客様と一つひとつ話し合う。その姿勢でサービスを提供したい」と述べる。
同事業部の西田沙織部長は、「医薬品メーカーと翻訳会社と協働で作り上げたMTとPEのモデルをお客様に提案し、広げていきたい」と話す。
これまでも同社は、医学・医薬特化AI翻訳サービス「AIKO SciLingual」の提供をはじめ、人手翻訳、メディカルライティングなど様々なサービスを提供している。AI翻訳では、臨床、非臨床、薬事、安全性報告など様々な場面において使用することを想定し、翻訳編集、データ管理、チーム共有、翻訳依頼ができる。
様々な規模の製薬企業、CROのニーズに合った形で翻訳エンジンをカスタマイズし、MTによる翻訳の品質を高めると共に、PEにおける各種作業の効率化を図り、その結果として納品までのリードタイムの短縮化を実現している。特化型MT+PEという今回の新たな取り組みでサービスの質を高めたい考えだ。
西田氏は「翻訳メモリや用語集作成など、製薬企業の言語資産管理の元になる様々なサービスを提供することも可能です。ぜひご相談をいただきたい」と呼びかける。
アスカコーポレーション
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