日本病院薬剤師会は今年度から、薬剤師の業務を非薬剤師や他の医療従事者にシフト、シェアすることについて、各病院の薬剤部が取り組みやすくなるように支援する。タスク・シフト/シェアに関する検討特別委員会で全国の好事例を収集し、共有する考え。必要な研修を定めるなどマニュアルの整備も視野に入れて活動する計画で、日病薬の従来の姿勢から一歩踏み込んだ支援になる見込みだ。
非薬剤師の活用は以前から各病院で行われてきた。事務員、補助員など呼び方は各病院によって様々で、薬剤師の仕事をどこまで任せるのか、薬剤師と非薬剤師をどう連携させるのかなどにも違いがある。薬剤部のスタッフに占める非薬剤師の比率も異なり、各病院の薬剤部がそれぞれの考え方で取り組んでいるのが現状だ。
日病薬はこれまで、国が推進するタスク・シフトやシェアの流れに乗って、医師と薬剤師の協働を増やしたり、広げたりすることに力を入れてきた。各病院の非薬剤師活用の動きについては静観していたが、主体的に関わることを決めた。
日病薬の武田泰生会長は、8月下旬の記者会見で「これまでは薬剤師がタスクを受ける事例を一生懸命収集してきた。しかし、受けるばかりでは薬剤師の負担が大きくなってしまう」と語った。地域や病院の規模によっては薬剤師を十分に確保できる状況ではなく、薬剤師の効果的な業務展開と業務の効率化を合わせて考える必要があるとした。
非薬剤師の活用にはメリットとリスクがある。メリットは、非薬剤師を増やすことで薬剤師は病棟業務などに力を費やせるようになり、医師や看護師との連携を強化して、院内で信頼を獲得できることだ。こうした職場環境を外部にアピールして薬剤師を確保できれば、さらなる業務拡充を果たせる。実際に、この良好なサイクルで薬剤部の業務を発展させた事例がある。
一方、リスクは「薬剤師を確保しづらいなら、非薬剤師を増やせば良い」との病院経営側の短絡的な思考で非薬剤師のみが増えてしまい、院内で薬剤師の業務拡充につながらないことだ。薬剤師が非薬剤師に仕事を奪われただけの格好になってしまってはいけない。
どちらに転ぶのかは結局のところ、各病院の薬剤部長の力量に左右される。日病薬は方向性や考え方を示すことしかできない。実際には薬剤部長が、非薬剤師の活用を含めた薬剤部の業務展開について戦略を練り、時には病院の経営側と渡り合って段階的に実現させるしかない。
とはいえ、具体的にどのような順序で物事を進めていけば良いのかと悩んでいる薬剤部長は少なくないだろう。その悩みの解決に、日病薬が収集する好事例は役に立つはずだ。好事例では、薬剤部長の考え方や院内でのアプローチ手順など、できるだけ詳しい情報を網羅してほしい。