日本薬学会第145年会が3月26~29の4日間、福岡市内で開かれた。シンポジウム「国内外の医療技術の社会実装の差(ドラッグ&デジタルデバイスロス)をどう乗り越えるか?」では、後藤励氏(慶應義塾大学経営管理研究科教授)が「SaMDとオーファンドラッグの償還と値付け」をテーマに講演。

オーファンドラッグなどの償還可否は、各国の医療技術評価 (HTA) 機関が行い、値付けも並行して進められて決まるが、SaMDにおいてはHTA機関が技術をどう評価して償還するかについてのルールを設けている国がフランス、ドイツ、ベルギーのみと少なく、「評価、償還、値付けの方法も国によって千差万別」との実情を示した。
また、国によって償還、値付けを行う際に求められるエビデンスの種類や価格付けの方法なども異なり、費用対効果に上乗せして国の財政影響も考慮しなければならないベルギーではもっとも価格が抑えられるとの認識を示した。
後藤氏は、医薬品や医療機器の承認・償還・値付けについて、日本では薬事審議会で承認し、中央社会保険医療協議会で償還、値付けを行うなど、「ほぼ一体化されていて、承認から収載までさほど時間がかからない」とする一方、米国ではFDAが承認を行い、償還や値付けは公的医療保障制度の運営主体であるCMS(The Centers for Medicare & Medicaid Services)が行うなど、「海外ではそれぞれ異なるプロセスや考え方で行われることが多く、特に償還と値付けについては国によってかなり違いがある」と説明した。
これは、承認のプロセスでは有効性・安全性を評価するが、償還では既存の医薬品や医療技術との比較だけでなく、費用対効果などの医療経済評価予算への影響などを踏まえた相対的な有用性が考慮される傾向にあるためで、「どのプロセスを重視するかは国によっても異なる」と述べた。