【産総研/筑波大】唾液中6代謝物で睡眠不良判定‐PSQIスコアと86.6%の確率で合致

2025年04月24日 (木)

 産業技術総合研究所と筑波大学の研究グループは、慢性的な睡眠不良を唾液で判定する技術を開発した。唾液中の6代謝質が睡眠不良の指標になることを発見、唾液中の代謝物をもとにした睡眠不良とピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)による判定が86.6%合致した。非侵襲的判定が可能で、自宅や職場、高齢者施設でのヘルスケアへの応用が期待される。

 睡眠障害は、うつ病などの精神疾患や生活習慣病の発生リスクを高める。しかし、毎日の睡眠の状態については簡易デバイスを用い比較的簡便に客観的な計測ができる一方、慢性的な睡眠障害の診断は困難で、PSQIや睡眠日誌など被検者の主観に依存した手法が中心となっている。

 今回、同研究グループは、慢性的な睡眠不良を判定するための非侵襲的バイオマーカーの探索と、その開発に取り組んだ。

 研究に当たっては、薬やサプリメントなどを摂取していない45~60歳の日本人男性730人を対象に、PSQIによる睡眠の評価を行い、そのうち睡眠に問題のない(PSQI≦2)対照群50人と、睡眠に問題があると考えられる(PSQI≧6)睡眠不良群50人から起床後の唾液を採取し、CE-FTMSによるメタボローム解析によって唾液中に含まれる代謝物を解析した。

 検出された683種類の代謝物のうち、半数以上の被検者で検出された435代謝物のデータを用いランダムフォレスト解析を行った。その結果、対照群と睡眠不調群を判別するために重要な6代謝物(トリメチルアミン、グリセロール、馬尿酸、ホスホクレアチン、3-フェニルプロピオン酸、イミノジ酢酸)が明らかとなった。

 これら代謝物を用い睡眠不要を予測する判別モデルを作成し、AUCを用いて判別性能を評価した。その結果、PSQIスコアによって判定した睡眠不良者を86.6%の確率で判別できることが分かった。6代謝物の中には、腸内または口腔内の細菌由来と考えられるものも含まれており、これらの細菌と睡眠不良の関連性が示唆された。

 今回の成果は、慢性的な睡眠不良を客観的かつ非侵襲的に評価できるだけでなく、PSQIでは困難とされる睡眠状態の経時的変化を評価できる可能性も考えられる。将来的には、睡眠障害患者の診断や治療効果の判定などへの応用も考えられる。また、自宅における慢性的な睡眠不良に対するセルフケアへの活用や、学校や職場、高齢者施設などでの睡眠管理にも活用されることも想定される。

 同研究グループは現在、唾液中の6代謝物を簡便に計測できる試薬キットや簡易デバイスの開発に取り組んでいる。また、今回の被検者には、深刻な睡眠障害によって治療を受けている患者は含まれておらず、今後は睡眠障害者を対象に評価を行い、睡眠障害の診断や治療効果の判定への活用についても検討していく。


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