パラマウントベッドと陽と人(ひとびと)はこのほど、更年期世代の女性従業員を対象とした「DE&I対応型ヘルスリテラシー研修と更年期当事者の不調改善伴走支援プログラム」を共同開発し、セントラル石油瓦斯の女性従業員等を対象に同プログラム実施した。その結果、更年期世代の女性従業員は環境要因として職場だけでなく家庭でも責任や負荷がのしかかっているほか、身体的要因として更年期不調・不眠など、総合的な要因が生産性に影響を与える「見えない不調」が存在していることが浮き彫りになった。
同支援プログラムは、女性従業業員が抱える更年期の症状や睡眠などの健康課題に対応するための包括的なサポートプログラム。
女性特有の健康課題に関する基礎知識研修を職場で実施することから始まる。役員や管理職向けにアクティブラーニング型のワークショップ研修も行う。その後、女性当事者に向けて睡眠を含む更年期症状改善に取り組む伴走型プログラムを2カ月間実施する。パラマウントベッドの非装着型睡眠計測センサーによる睡眠データの測定や、個別カウンセリング等を通じ、個人の症状や特性に合わせて、睡眠状態等の可視化と改善行動をサポートする。最後に、知識研修やプログラム実施の結果を企業にフィードバックする。
プログラムは、昨年6月10日から11月13日まで実施。参加者は25歳以上の女性従業員40人に「知識研修」を、40歳以上の役員・管理職の男性40人には「知識+思考、体験型研修」を行った。また、更年期症状や不眠のある25~59歳の女性従業員15人にはアンケート調査、睡眠計測、カウンセリング、セルフケア用品提供を実施し、更年期症状・不眠・心理・認知行動に関する主観アンケートとシート型の睡眠計測センサーによる客観データを用い、対策開始前の1カ月から開始後1カ月の変化を評価した。
支援プログラムで自覚症状が改善
プログラム実施前の現状を把握するため、更年期症状や不眠症状等の様々な指標をアンケート調査で測定。その結果、KKSI(更年期症状の重症度)はSRQ-D(うつ傾向)、ローゼンバーグ自尊感情尺度(自己肯定感)、アテネ不眠尺度(不眠度)、SPQ(プレゼンティーズム:生産性低下)などと有意な相関があった。
更年期症状が重い人ほどうつ症状や不眠症状が重く、仕事のパフォーマンスが低い傾向にあり、また自尊感情尺度が低い人ほどうつ傾向がある結果となった。
なお、参加者の9割以上が「家事」を担っており、「家事」のメインが「自分」と回答したうちの4割は「家計」を支える存在でもあった。女性は就労しながらも未だに家事の負担が大きいことに加え、「家計」にも大きな責任を負っていることが伺えた。特に、更年期を迎える女性は、「仕事」や「家庭」など様々な役割を一手に引き受けている実情が明らかとなった。
同プログラム実施によって、参加者の▽8割以上が睡眠スコア上昇▽約7割がアテネ不眠尺度が改善▽約7割のKKSIが改善▽約7割が更年期に関する知識の向上▽約5割の自己肯定感スコアが上昇――といった変化が見られた。
実際に参加者の「行動変容」につながることが、企業としてプログラムを導入する意義の一つと考えられる。今回、プログラム参加者のうち約9割が、自身の行動変容につながったと回答した。
こうした結果を受け、更年期カウンセラーの吉川千明氏は、「更年期とは、女性ホルモンの低下に加え、その人の体質・基質、そして環境の三つが絡まり合う時期。健康の底上げは、本人の人生の質を高めるだけでなく、企業の持続的成長にもつながる。参加者の多くが身体の話を真剣に聴いてもらったのは『初めて』と語っている。今後は、女性従業員本人だけでなく、管理職や同僚にも、更年期の正しい知識をスタンダードとして共有していくことが求められる。これは単なる“女性の問題”ではなく“健康”の話なのです」とコメントしている。