【東大病院精神神経科】高校生の援助希求行動、仲間を積極的に助ける学級の雰囲気と関連

2025年05月16日 (金)

 高校生が困ったときに他者に助けを求める行為(援助希求行動)は、積極的に他者を助ける学級の考えや行動(向社会性)と関連する。東京大学病院精神神経科の研究グループが、中高生に協力を得た大規模調査データから明らかになった。高校での他者と助け合う学級風土づくりが、日頃の友人同士の支え合いを促し、精神的に困ったときの助けの求めやすさにつながることが示唆された。

 これまで、思春期において向社会性が援助希求行動を促進するとの研究はあるが、それが個人内での関連か、所属集団との相互作用を介したものかを検証した研究はなかった。また、発達段階やいじめ被害体験が向社会性と援助希求行動の関係に影響するか調べた研究もなかった。

 今回、所属する学級および個人レベルの向社会性と援助希求行動の関連を検証した。また、学校区分(中学生、高校生)や性別によるサブグループごとの影響の差異やいじめ体験による調整効果も調べた。

 まず、同研究グループは埼玉県私学協会と連携し、中学生・高校生を対象とした年1回の疫学横断調査を行った。得られたデータ2万1845人(2020年5000人、21年6062人、22年5659人、23年5124人)の向社会性、援助希求行動(困っているが誰にも相談できない[援助希求困難]、友人・家族・担任教員・医師に相談等)、いじめ被害体験、学校区分(中学生、高校生)、性別、メンタルヘルスの問題のデータを用いて、一般化ランダムモデルで分析した。

 このとき、複数年度参加している可能性のある参加者のデータは除外した。学級レベルの向社会性は1学級ごとの向社会性の平均値、個人レベルの向社会性はその学級平均からの偏差とし、メンタルヘルスの問題などの共変数と同時にモデルへ投入した。

 その結果、個人の向社会性やメンタルヘルスの状態にかかわらず、学級レベルの向社会性が高いほど友人に援助を求める高校生が多いことが分かった。このことは、年度別に分析しても傾向に変化はみられなかった。また、性差やいじめ被害体験の有無による結果の変化もなかった。

 中学生では、学級レベルの向社会性と友人への援助希求行動の関連性はみられなかった。さらに、個人レベルの向社会性は、様々な援助資源(友人、家族、担任教員、保健室の先生等)への援助希求行動が増加することも分かった。

 今回の検討から、個人の向社会性の高さやメンタルヘルスの問題の程度にかかわらず、学級単位の向社会性を高めていくことは、高校生の友人への援助希求行動を促進することが示唆された。

 同研究グループは、「精神的困難さを他人に相談することには、未だに抵抗感や偏見を持つ人も少なくない。学校現場で他者と助け合い学級の雰囲気づくりが、他人に助けを求めやすい環境づくりにつながり、虐めや自殺への対策の一つになることが期待される」としている。


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