国内医療用医薬品市場の今後5年間の成長率予測値は約2%と低いが、日本の医療用医薬品産業は基本的に安定成長産業であり、給与水準も高い。その中で今までになかった動きが出ており、キャリアのチャンスになり得る。
その一つは、今後も高い需要が見込まれるバイオ医薬品・製品の製造や品質を担う人材。製造や品質管理は日陰の印象があるが、バイオ分野は専門性が高く、需要は高い。もう一つはジェネリック(GE)医薬品産業の事業転換。製薬産業のメインではないと思われるかもしれないが、いずれも国が後押しする動きだ。
日本の製薬産業が世界に遅れている領域は、バイオ。開発と国内製造、専門人材の育成がとても遅れており、製造体制整備、人材の育成・確保は政府の大方針。厚生労働省は「バイオ医薬品は今後の成長領域であるが、わが国はそのほとんどを海外に依存し、国内製造されていない現状があり、経済安全保障上問題」と指摘する。国内での製造・品質に関わる人材育成に引き続き予算を充て、支援していく構えだ。
厚労省は既に、その製造技術・開発ノウハウに関する企業の社員対象の基礎的な研修や、製薬企業の実生産設備を利用した研修に対して補助金を交付し、一人前の製造技術者の育成を進めており、来年度予算でも拡充を目指す。
生産集積地の富山県では、県内大学生向けの人材育成研修を8月と9月に実施した。産学官支援組織「くすりのシリコンバレーTOYAMA」(富山くすりコンソ)がバイオロジクス研究・トレーニングセンター(BCRET)の協力のもと、ウェブ講習「バイオロジクスの製造開発の基礎と応用」(受講者16人)、現場実習「抗体医薬の培養・精製」(同10人)を行った。
富山くすりコンソは「今回の経験が将来の進路やキャリア形成において大きな糧となる」ことに期待を寄せる。
もう一つの動きが、GE産業の事業転換。複数社の不正製造問題に端を発し、薬が足りないという前代未聞の問題を引き起こしたが、国の後押しで各社は事業改革を急いでいる。企業同士で製造を分担したり、新たなグループを形成したりして、安定供給できる体制を強化しようと急いでいる。
その動きは大きく二つ。一つは新薬開発も行うMeiji Seika ファルマとダイトによる企業連携グループで、各社が集まりだしている。もう一つは、日医工、共和薬品、T’sファーマ(旧武田テバ)を傘下に置く持ち株会社「アンドファーマ」。国内ファンドが立ち上げたが、10月に世界的商社の伊藤忠商事と新薬メーカーの持田製薬が出資した。この中では日医工が沢井製薬と協業に向け協議するという、かつては考えられなかった組み合わせの動きも出ている。
アンドファーマは、国内産業化を国も後押しするバイオ後続品の事業拡大に乗り出す。Meijiとダイトは、両社ともアジア事業の強化を掲げる。海外展開が視野に入ると考えられる。
GEの国内市場は飽和しており、各社の成長力に疑問を持つ人は少なくないだろう。今の動きは事業基盤を強固にすることによる安定供給体制の確立に加え、将来の成長事業基盤をつくる第一歩と見ることもできる。
















