東北大学大学院農学研究科と伊藤園、島津製作所などの研究グループは、島津製作所が開発した腸内細菌共培養デバイスを用いて、ブタの小腸上皮細胞と乳酸菌[ラクチプランチバチルス・プランタルム(JCM1149T株)]の生菌あるいは不活性菌を培養(共培養)し、細菌の生死の違いにより腸管上皮細胞の代謝や免疫の反応が変わることを突き止めた。この成果は、代謝改善や免疫機能調節などの目的に応じて、乳酸菌を「生菌(プロバイオティクス)」あるいは「不活化菌(ポストバイオティクス)」として使い分けるという、新たな機能設計の視点を提示するもの。
今回の研究では、マイクロ流体共培養デバイスを用い、生きた乳酸菌と小腸上皮細胞を同時に培養できる実験系を構築した。この手法により、腸細胞のバリア機能を維持した状態で、生菌および不活化菌の影響を直接比較することが可能となった。
ラクチプランチバチルス・プランタルム(JCM1149T株)の生菌および加熱処理した不活化菌を用い、ブタ小腸上皮細胞の反応を網羅的に解析した。電子顕微鏡観察、RNAsequencing解析に加え、細菌側についてもトランスクリプトーム解析、メタボロミクス解析、リピドミクス解析を行った。
RNA sequencing解析の結果、生菌との共培養では、乳酸菌による酸素消費に伴い、低酸素応答や解糖系など代謝関連遺伝子の発現が増強されることが明らかになった。一方、不活化菌との共培養では、NF-κB経路を中心とした免疫関連遺伝子の発現が顕著に増強した。また、加熱処理によって乳酸菌表面の構造が大きく変化することが確認され、この構造変化が免疫応答誘導に寄与している可能性が示された。
さらに、生菌との共培養では脂質合成関連遺伝子の発現が増強し、9,10-DiHOMEや12,13-DiHOMEといった脂質メディエーターが、核内受容体型転写因子PPARγを介して腸細胞の代謝変化に関与している可能性が示された。
このことから、同じ乳酸菌ラクチプランチバチルス プランタルム(JCM 1149T株)であっても、生菌は代謝応答を、不活化菌は免疫応答を主に活性化することが明らかになった。
今回の成果は、「乳酸菌は必ずしも生きていなければならないのか」という問いに対し、新たな科学的根拠を提示するもの。今後、乳酸菌の状態による作用の違いをさらに詳細に解明することで、代謝改善や免疫機能調節など、目的に応じた食品・機能性素材への応用が期待される。
また、研究で用いた共培養デバイスは、微生物と生体細胞の相互作用を解析する新たな研究プラットフォームとして、プロバイオティクス研究や食品機能研究の発展に貢献すると考えられる。
この成果は、3月31日に米国の国際科学誌「iScience」にオンライン掲載された。
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