国際臨床化学連合(IFCC)、アジア太平洋臨床生化学連合(APFCB)、日本臨床化学会(JSCC)、日本臨床検査医学会(JSLM)の4団体は、臨床検査値の基準範囲を設定する国際研究プロジェクトをスタートさせた。日本12地域、アジア9地域の健常人3500人以上が参加する多施設共同研究として、93項目の臨床検査値を測定し、アジア地域の共有基準範囲の設定を目指す。既に約9割の項目で測定を終了しており、2010年3月までに全てのデータを公開する予定だ。
臨床検査値の国際標準化は、1980年代から進められてきたが、依然として健常人検査値の基準範囲には大きな施設間差が存在しているのが現状。ただ、安定した基準範囲の設定には、1000人以上の十分なデータが必要とされることから、今回、アジア地域の多施設が参加し、多数の健常人検査項目の地域差を分析することで、基準範囲の設定を求める国際研究プロジェクトを発足させることになった。
プロジェクトの責任者には、山口大学医学部保健学科病態検査学の市原清志教授が就任。日本とアジア9地域(韓国、香港、マカオ、インドネシア、シンガポール、ベトナム、中国、台湾、マレーシア)の医療従事者3500人以上の健常人ボランティアを得て、血液検査、生化学検査、免疫学的検査、イムノアッセイ検査など93項目の測定を行う。また、測定法間差や試薬メーカー間差を除外するため、全ての試料をベックマン・コールターで一括測定することとした。
既に約9割の項目で測定を終了した。中間データの速報値によると、▽HDLコレステロールは日本で明らかに高い▽免疫グロブリンと補体成分はアジア南部地域に南下するほど高い▽腫瘍マーカーのCA125は、閉経後女性で特に高い--ことなどが判明。市原氏は「期待以上のいいデータで、こうしたデータが実際の診断に活用できる」と感触を語っている。
今後、さらに検査項目の測定を進め、基準範囲を明確にしたい考えで、10年3月には全てのデータを公開することにしている。