ファイザーは1日、プライマリー・ケア事業部門長の梅田一郎氏が新社長に就任するトップ人事を発表した。2010年上期に予定しているワイス日本法人との統合作業にメドが立ったことから、新体制でビジネス・ユニット制(事業部制)を本格始動させることになった。新社長に就任した梅田氏は、引き続き中核部門のプライマリー・ケア事業部門長を兼任し、前社長の岩崎博充氏は名誉会長となる。都内で記者会見した梅田氏は、「かつて厳しい時期を経験したが、ビジネス・ユニット制、ワイスとの統合に向け、大事な基礎ができつつあり、これらを成功させることで、一層の全社一丸体制を作っていきたい」と抱負を語った。
9月にビジネス・ユニット制を導入したファイザーは、「プライマリー・ケア事業部門」「スペシャリティ・ケア事業部門」「オンコロジー事業部門」「エスタブリッシュ製品事業部門」「アニマルヘルス事業部」の5事業部門に再編し、1日から新体制でビジネス・ユニット制を本格始動させた。
中核部門となるプライマリー・ケア事業部門は、降圧剤「ノルバスク」、高脂血症治療剤「リピトール」など、主に開業医で処方される製品群を担当する。また、スペシャリティ・ケア部門は、ワイス日本法人社長のマイケル・ゲトラー氏が取締役執行役員スペシャリティ・ケア部門長に就任し、加齢黄斑変性症治療薬「マクジェン」、関節リウマチ治療薬「エンブレル」、小児用肺炎球菌ワクチン「プレベナー」などのバイオ医薬品を展開することで、ワイスとの統合メリットを最大化させる。
エスタブリッシュ部門‐「古くて良い製品」を担当
一方、新設した「エスタブリッシュ製品事業部門」は、独占権消失後の製品群を扱う部門と位置づけ、長期収載品とジェネリック医薬品(GE薬)を手がける。取締役執行役員エスタブリッシュ製品事業部門長の松森浩士氏は、「古くても大切に使われている製品という概念で捉え、GE薬も含め、新薬と同じ位置づけで提供していきたい」との考えを示した。
具体的には、特許切れした主力製品とGE薬を含めた68製品のプロモーションを展開する。特にGE薬に関しては、10年を新規参入に向けた準備期間と位置づけ、11年以降にファイザー製品以外のGE薬を市場投入する予定だ。松森氏は「GE薬事業にファイザーとして参入することで、新薬のノウハウを活用した質の高い製品を提供できる」と述べた。また、主力製品は、特許切れ後は情報提供が手薄になっているとして、降圧剤「カルデナリン」、睡眠導入剤「ハルシオン」をはじめとする11製品に注力し、MRを介さず電子的に情報提供を行っていく方針だ。
ただ、米ファイザーは、GE薬子会社を通じて、自社製品のGE薬販売も行っているが、「日本では他社と提携し、自社製品をGE薬として販売する予定はない」(松森氏)としている。
「GE薬の底上げに期待」厚労省がコメント
今回、ファイザーがエスタブリッシュ製品事業部門を新設し、GE薬に参入したことを受け、厚生労働省医政局経済課の木下賢志課長は、「GE薬市場の活性化につながることを期待したい。品質力がGE薬全体を動かすので、ファイザー独自の品質基準に基づいてGE薬を供給し、全体としての信頼性の向上に、ぜひ、つなげてほしい」とコメントした。また、保険局医療課の磯部総一郎薬剤管理官は、「大手が参入することは良いことだと思う。大手はベースコストが高いと思うが、GE薬は安さが売りなので、極力安く供給することをお願いしたい」と話している。