初の「GLP-1アナログ製剤」も
厚生労働省が20日付で承認した新医薬品では、国内初のGLP‐1アナログ製剤「ビクトーザ」、むずむず脚症候群治療薬として追加承認を取得した「ビ・シフロール」、国内2番手の投入となるDPP‐4阻害薬「エクア」、緊急性の高さから特例承認を受けた新型インフルエンザワクチン「アレパンリックス」「乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1『ノバルティス』」など、話題性のある製品が続々と登場した。
ビクトーザ皮下注:ノボ・ノルディスクファーマ
「ビクトーザ皮下注18mg」(一般名:リラグルチド遺伝子組み換え)は、国内初のヒトGLP‐1アナログ製剤。食事療法、運動療法で十分な効果が得られないか、食事療法、運動療法にSU剤を併用して効果が得られない2型糖尿病を適応に承認された。
1日1回の投与で、体重を増やさずに血糖コントロールの改善効果が得られ、膵β細胞機能の指標も改善する。2009年6月に欧州で承認されている。
アレパンリックス筋注:グラクソ・スミスクライン
「アレパンリックス(H1N1)筋注」は、鶏卵を用いて製造され、抗原に免疫増強剤を混合したA/H1N1新型インフルエンザワクチン。新型インフルエンザの流行に伴う緊急的な必要性を受け、今回、海外承認を前提に、特定承認医薬品として承認された。
成人と10歳以上の小児には0・5mL、6カ月以上10歳未満の小児には0・25mLを筋肉内に注射する。
健康成人100人を対象に行われた国内臨床試験では、1回の接種で高い免疫応答が認められ、小児60人の検討でも、1回の接種で100%の抗体保有率が確認されている。
アレパンリックスの承認を受け、GSKは日本政府と契約した7400万回分の出荷を開始する。
乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1「ノバルティス」筋注用:ノバルティスファーマ
「乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1『ノバルティス』筋注用」は、スイスのノバルティスが独自に開発したアジュバント「MF59」を添加した細胞培養によるインフルエンザウイルスワクチン。今回、3歳以上に対する新型インフルエンザの予防の適応で特例承認された。
18歳以上50歳未満には、0・25mLを筋肉内に1回注射し、3歳以上18歳未満と50歳以上には、0・25mLを少なくとも3週間の間隔を置いて、筋肉内に2回注射する。
既に、日本政府と締結した2500万回分のワクチンの生産は完了しており、1200万回分を先行して出荷する予定。細胞培養によるA型インフルエンザパンデミックワクチンとしては、ドイツ、スイスに続き、世界で3番目の承認国となる。
エクア錠:ノバルティスファーマ
「エクア錠50mg」(一般名:ビルダグリプチン)は、インクレチン分解酵素のDPP‐4を選択的に阻害する経口2型糖尿病治療薬。単剤あるいはSU剤との併用療法で1日2回の投与を行い、2型糖尿病患者の血糖値をコントロールする。
現在、「ガルバス」の製品名で世界約70カ国で承認されている。
ビ・シフロール錠:日本ベーリンガーインゲルハイム
「ビ・シフロール錠0・125mg、同0・5mg」(一般名:プラミペキソール)は、2003年にパーキンソン病治療薬として国内承認された非麦角系選択的D2受容体作動薬。今回、国内で初めて、「中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」の適応を取得した。
既に欧米では、むずむず脚症候群に対する第一選択薬で用いられ、国内で行われた臨床試験でも、高い症状改善効果が示されている。現在、国内のむずむず脚症候群の有病率は2~5%で、重症患者は200万人と推定されている。
アロキシ静注:大鵬薬品
「アロキシ静注0・75mg」(一般名:パロノセトロン塩酸塩)は、大鵬薬品がスイスの「ヘルシン」から導入した5‐HT3受容体拮抗型制吐剤。1回の投与で抗癌剤「シスプラチン」など化学療法に伴う悪心・嘔吐を予防する。
既存薬に比べ、血中消失半減期が約40時間と長いのが特徴で、抗癌剤の投与後24時間以内に発現する急性悪心・嘔吐に加え、既存薬で効果不十分な遅発性悪心・嘔吐にも効果を発揮する。現在、世界62カ国で承認されている。
ブリディオン静注:シェリング・プラウ
「ブリディオン静注200mg、同500mg」(一般名:スガマデクスナトリウム)は、シェリング・プラウが創製した新規筋弛緩回復剤。筋弛緩剤「ロクロニウム」「ベクロニウム」を選択的に包接することで、筋弛緩作用を不活化する世界初の作用機序によって、筋弛緩状態にある患者に対し、速やかな回復を促すと共に、残存した筋弛緩によって引き起こされる重篤な呼吸器疾患の発症を予防する。
アフィニトール錠:ノバルティスファーマ
「アフィニトール錠5mg」(一般名:エベロリムス)は、抗癌剤では国内初の経口mTOR阻害剤。VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬「スニチニブ」「ソラフェニブ」が無効となった進行性腎癌患者を対象に投与が認められた。
細胞増殖や血管形成の調節因子「mTOR蛋白」を選択的に阻害し、癌細胞に対する増殖抑制と血管新生阻害の二つのメカニズムで抗腫瘍効果を発揮する。
エックスフォージ配合錠:ノバルティスファーマ
「エックスフォージ配合錠」は、ARB「ディオバン錠80mg」(一般名:バルサルタン)とカルシウム拮抗剤「アムロジピンベシル酸塩」を配合した高血圧治療薬。バルサルタン80mgとアムロジピン5mgを1剤に含有した。
ヒュミラ皮下注:アボットジャパン/エーザイ
「ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0・8mL」(一般名:アダリムマブ)は、アボットジャパンとエーザイが国内共同開発を進めてきたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体。炎症反応に関わるサイトカインであるTNFαを中和することで効果を発揮する。今回、尋常性・関節症性乾癬の効能・効果で追加承認を取得した。
サインバルタカプセル:塩野義製薬
「サインバルタカプセル20mg、同30mg」(一般名:デュロキセチン塩酸塩)は、米イーライリリーが創製したセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)。1日1回の経口投与で、精神症状のみならず、身体症状も含めた多様なうつ症状に効果を発揮する。
04年8月に米国で発売されて以来、95カ国で承認されている。国内では、塩野義製薬が中心となって開発が進められた。
メロペン点滴用:大日本住友製薬
「メロペン点滴用バイアル0・25g、同0・5g、同キット0・5g」(一般名:メロペネム水和物)は、大日本住友製薬が自社開発した注射用カルバペネム系抗生物質製剤。今回、新たに「発熱性好中球減少症」の効能追加と、これに対する用法・用量の追加承認を取得した。
発熱性好中球減少症に対して、成人では海外と同量の1日3g(力価)投与が認められた。
デュロテップMTパッチ:ヤンセンファーマ
「デュロテップMTパッチ2・1mg、同4・2mg、同8・4mg、同12・6mg、同16・8mg」(一般名:フェンタニル)は、フェンタニルを粘膜層に溶解させた半透明フィルム状の経皮吸収型製剤。これまで中等度から高度の癌性疼痛の適応で使用されてきたが、新たに中等度から高度の非癌性慢性疼痛の適応で追加承認を取得した。
ザラカム配合点眼液:ファイザー
「ザラカム配合点眼液」(一般名:ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩)は、プロスタグランジンF2α誘導体のラタノプロストと、β遮断薬のチモロールマレイン酸塩を含有する配合剤。米ファイザーが緑内障・高眼圧症治療剤として開発した。
点眼剤を2剤以上併用する場合、涙嚢から薬液があふれ出し、効果が十分に発揮されなかったり、点眼の間隔を5分以上あける必要があったが、配合剤によって不便さとコンプライアンスの問題を解消した。
レザルタス配合錠:第一三共
「レザルタス配合錠LD、同HD」は、アンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)「オルメテック錠」(一般名:オルメサルタン・メドキソミル)と、持続性カルシウム拮抗剤「カルブロック錠」(一般名:アゼルニジピン)の配合錠。今回、オルメサルタン・メドキソミル10mg、アゼルニジピン8mgを含有した「LD」と、オルメサルタン・メドキソミル20mg、アゼルニジピン16mgを含有した「HD」の2製剤が承認された。
テモダール点滴静注用:シェリング・プラウ
「テモダール点滴静注用100mg」(一般名:テモゾロミド)は、悪性神経膠腫を適応とするアルキル化剤。06年から発売中のカプセル剤に続き、点滴静注剤が追加された。
頭蓋内圧上昇に伴う悪心や嘔吐、脳幹への腫瘍の浸潤によって、カプセル剤を服用できない悪性神経膠腫患者に対し、新たな治療選択肢を提供する。
メトグルコ錠:大日本住友製薬
「メトグルコ錠250mg」(一般名:メトホルミン塩酸塩)は、ビグアナイド系経口血糖降下剤。大日本住友製薬が03年に仏メルクサンテから導入し、国内で開発を進めたもの。
メトグルコは単剤療法が可能で、既存製剤の1日最大用量750mgに対して、1日維持用量として750~1500mg、1日最大用量として2250mgの投与が可能になった。また、食前に加え、食後投与も可能。
レミケード点滴静注用:田辺三菱製薬
「レミケード点滴静注用100」(一般名:インフリキシマブ)は、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤として、これまで「関節リウマチ」などの治療に用いられてきたが、新たに乾癬(尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症)の効能・効果で追加承認を取得した。
献血ベニロン‐I静注用:化学及血清療法研究所/帝人ファーマ
「献血ベニロン‐I静注用500mg」(一般名:乾燥スルホ化人免疫グロブリン)は、化血研と帝人ファーマが共同開発した静注用人免疫グロブリン製剤。今回、希少疾患のチャーグ・ストラウス症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎における神経障害の改善の効能・効果で、追加承認を取得した。ステロイド剤が効果不十分な場合に使用できる。