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患者搬送時の通信網普及を

2007年1月26日 (金)

 高齢化社会の進行に伴って、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患に対する医療の重要性はますます高まっている。これらの疾患によって、患者が要介護状態になるケースが多いからだ。

 急性心筋梗塞の発症数は、人口10万人当たり50人前後と推定されている。近年、急性心筋梗塞の院内死亡率は、CCU(冠疾患集中治療室)の整備、致死性不整脈治療、再灌流療法などにより、大幅に改善されてきた。脳梗塞も再灌流療法などの適用により、心筋梗塞と同じ傾向にある。

 とはいえ、急性心筋梗塞による致命率は26040%と言われており、依然として高い数字であることに変わりはない。しかも、死亡の半数以上は院外で発生しており、院外心停止への対策が大きな課題となっている。特に、循環器救急医療では、発症早期に治療可能な病院へ適切に搬送するための体制整備と、病院前救護の充実が指摘されている。

 これらを実現するため、心肺機能停止状態の患者に対して、医師の指示の下に気道確保や輸液路確保、除細動等の特定医療行為を可能とする救急救命士制度が創設されたのは1991年、今から15年あまり前のことである。だが、この制度を有効に活用するためには、救急車で搬送中に指示を受ける常時指導体制の充実が不可欠なことを忘れてはならない。

 常時指導体制を充実するには、どのような手立てが考えられるのか。ヨーロッパやアメリカでは携帯電話網を用いて、搬送時に患者の生体情報や画像をリアルタイムに伝送するシステムが汎用されている。残念ながら、海外ではまだ第2世代携帯電話回線が主流のため、少量のデータしか送れない。そのため8本の携帯電話を束ねるなどの工夫を凝らして、救急車内の患者の状態を動画像で病院に伝達しているのが現状だ。

 これに対し日本は、携帯電話通信網の技術面においては諸外国を一歩リードしている。大量の画像データが送信できる、FOMAなどの第3世代携帯電話回線が構築されているからだ。米国では、いち早く日本の第3世代技術を救急搬送システムに導入する動きが見られたが、わが国でもようやく、同技術の医療応用が試みられるようになった。

 その一つが、国立循環器病センターを中心とする産官学連携によるモバイル・テレメディシン研究会が推進した「モバイル・テレメディシン・システム」の開発だ。昨年12月に完成した同システムは、救急車で搬送中の患者の血圧、呼吸、脈拍などのバイタルサインや12誘導心電図、小型カメラからの動画など、緊急時に必要なデータを標準化し、FOMA回線と通常のインターネットを用いて、受け入れ先病院に伝えるという優れものだ。

 1誘導の心電図は患者の脈の乱れしか測定できないが、12誘導心電図では患者が救急車で搬送されている間に、医師がそのデータを見て心筋梗塞かどうかを判断できる。搬送中に診断がつけば、的確に専門病院への患者搬送が実現するだろう。専門病院でも、再灌流療法の医療チームを速やかに結成できるというメリットも生じる。

 良好な予後を保つには、発症後の早期治療が必要不可欠なことは言うまでもない。急性心筋梗塞や脳卒中は、治療を行うまでの時間が勝負である。モバイル・メディシン・システムのような、搬送時に患者情報を医師に詳しく伝達できる通信システムの普及が急務と言えるだろう。




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