業績悪化に歯止めかからず
SMO(治験施設支援機関)の事業再編が加速している。新GCP施行後、糖尿病・高血圧等の生活習慣病治療薬を中心に診療所治験の裾野を広げてきたが、激変する新薬開発環境が直撃し、苦境に陥るSMOが続出してきた。これまで表面化した事例だけでも、昨年11月に大手のイーピーミントがアスクレップメディオの地位を譲受し、12月にはノイエスがエス・エイ・エヌを傘下に収める臨床医薬研究協会を、CROのメディサイエンスプラニングと共同買収。年明けの5日には、最大手のサイトサポート・インスティテュートがメディカルヴィタを買収するなど、再編劇が相次いだ。さらに水面下でも小規模SMOの淘汰、廃業が進行し、SMOの先行き不透明感はますます高まっている。大手中心の企業吸収が主導する格好で、いよいよ本格的な淘汰の時代が幕を開けることになりそうだ。
SMOの成長原動力は、診療所が担う生活習慣病治療薬の開発増にあった。国内治験が「空洞化」から持ち直したのも、診療所治験が急増したことが大きな理由だ。こうした新たな潮流にSMOが果たした役割は誰もが認めるところで、生活習慣病治療薬の開発品があふれたピーク時には、200社以上のSMOが乱立し、絶好の機会と規模拡大の争いが繰り広げられた。
ところが、医療機関を支援するSMO事業は、CRCの人件費がほとんどを占める特異なビジネスモデルが特徴。過当競争が業績の不安定さを加速させ、新薬開発環境の変化が収益の乱高下をもたらし、一気に淘汰の波が押し寄せる事態になった。日本SMO協会が昨年実施した調査によると、2009年度の会員企業49社(当時)の総売上高は347億円。前年度比で12億円減と低下傾向が見られている。
既に水面下では、相当数のSMOの統廃合が進んでいると見られ、特に最近は、CRO子会社の大手SMOへの集約化が加速している。SMO協会の会員数もピーク時の65社から47社に減少。これまで指摘されてきたコスト圧力も高まり、製薬企業側がSMOを選別し始めたことも、地盤沈下の要因となっている。
その結果、SMO単体の生き残りは厳しさを増し、昨年11月から、イーピーミントによるアスクレップメディオの地位譲受、ノイエスとCROのメディサイエンスプラニングによる臨床医薬研究協会の共同買収、サイトサポート・インスティテュートによるメディカルヴィタ買収と、統廃合の動きが相次いだ。現在、SMO協会の会員数は42社程度まで減少している模様だ。
こうした中、東証マザーズ上場の独立系大手SMOである綜合臨床ホールディングスは、台湾の医療用モニター製造会社および国内販売代理店のミッドメディコと協業することで合意し、医療用モニター販売の新規事業に乗り出した。IT系サービス企業のシーエーシー(CAC)の資本参加で、CRO事業に足がかりを作ったのに続き、医療用モニター販売に進出することで、多角化推進に布石を打った格好だ。この動きも、SMO単体の生き残りは不可能との判断が働いたものとされ、今後はCROとSMOが相互乗り入れするグループ化がさらに加速することは必至だ。 もともとSMOは、日本独自のビジネスであり、国内治験のインフラ整備に大きな役割を果たしてきた。ただ、一気に業態が膨らんだ反動で、新薬開発環境の変化に対応できないSMOが続出している。開発業務を請け負うCROに比べて成長機会も少なく、さらなる統廃合は避けられそうにない。最近になって臨床研究支援という新たな方向性も見出されつつあるが、今後はSMOの存在そのものが問われていくことになりそうだ。