政府の医療イノベーション会議は16日、“日の丸”医薬品・医療機器を世界に発信し、医療分野を経済成長を担う新たな成長産業に育てることを目指す「医療イノベーション推進の基本的方針」をまとめた。[1]世界に通用する技術の実用化体制の整備[2]短期的な成果を上げるための重点的支援[3]縦割りを排除した産学官連携と重点分野への大胆な予算投入や規制改革[4]東日本大震災復興プランとの連携――を4原則に位置づけた。
医薬品分野では、基礎研究と実用化の「橋渡し支援」の重点化や、臨床試験の推進体制の強化を進める。具体策は内閣官房の医療イノベ推進室で検討しており、創薬支援機構の創設、アカデミックCROの整備、癌・認知症分野におけるGCP準拠の臨床試験などを、来年度にも予算化したい考えだ。
このほか基本方針には、中小ものづくり企業の技術を医療機器開発に生かす仕組みづくりや、再生医療の重点技術を集中支援する方向性が盛り込まれた。個別化医療については、短期的にはバイオバンク・データベースの整備、メディカル・インフォマティクス(医学情報学)機能の強化を進め、将来的に医療体制と法制度を整備することを明記した。
また、この日の会合では、震災復興と連動した個別化医療の新たなプロジェクト「東北メディカル・メガバンク構想」を東北大学が報告した。患者のゲノム情報と診療情報を一元管理する「複合バイオバンク」を同大学に整備し、バンクの医師やコメディカルスタッフを被災地域の医療機関に派遣して、地域医療を支援ながらデータを収集する。医療情報担当者や臨床研究支援者の養成にも取り組む。
宮城県沿岸部は人口の移動が比較的少なく、3世代同居家族が多いため、これまであまり行われてこなかった垂直ゲノムコホート研究も可能だ。解析結果は全面公開し、創薬や医療情報産業の拠点形成により東北地方の再生につなげていく。