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2011年薬業界その他の主なニュース

2011年12月30日 (金)

 先行きの不透明感が漂う中、年末を迎えてしまった。今年も10大ニュース以外にも様々な出来事があった。日本発の医薬品・医療機器の開発を産学官を挙げて取り組むため、医薬品医療機器総合機構が薬事戦略相談事業を開始した。また、治験・臨床研究を推進するため、新たな5カ年計画も検討されている。一方、医薬品卸業界は流通改善もままならない中、「壊滅的」といわれる営業利益率となるなど、厳しい対応を迫られている。いくつかのトピックスを取り上げ、今年1年を振り返ってみたい。

薬事相談事業スタート‐日本発医薬品など創出へ

 医薬品医療機器総合機構は7月から、薬事相談事業をスタートさせた。

 薬事戦略相談は、日本発の革新的医薬品・医療機器の創出に向け、有望なシーズを持つ大学・研究機関、ベンチャー企業などを対象に、開発初期から必要な試験・治験に関する指導・助言を行う事業。

 ただ、メーカーも利用できる。再生医療など新規性の高い分野は、通常の製品と異なり、メーカーでも手探りで対応せざるを得ない面もあるからだ。

 11月1日までに、質問事項などを打ち合わせる事前面談を67件行い、そのうち10件が対面助言に進んだ。その内訳は、医薬品関係が4件(大学3、研究機関1)、再生医療関係が6件(大学1、企業1、研究機関4)で、医療機器関係はなかった。

 対面助言の第1号は、京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)の、再生医療用iPS細胞バンクの構築に関するものだった。

ポスト治験5カ年計画‐年度末に向け活発な議論

 2007年度から5カ年計画で進められた新治験活性化計画が今年度で終了することを受け、厚生労働省は8月に「臨床研究・治験活性化に関する検討会」を組織し、“ポスト5カ年計画”のアクション・プランを来年3月をメドに策定するための作業に入った。

 今月には、関係者のヒアリングや、委員間の意見交換を踏まえて、次期臨床研究・治験活性化計画の骨子案が議論された。

 骨子案では、症例集積性を高めるため、地域別・疾患別の医療施設ネットワークや疾患レジストリーの構築、一般の人が治験に参加しやすい環境を整備するため、臨床研究・治験情報を公開する仕組みの検討などが必要としている。

 また、日本発の革新的医薬品・医療機器の開発に向けた臨床研究を推進するため、共同データセンターの設置や、臨床研究の支援組織であるAcademic ResearchOrganization(ARO)の必要性について検討を開始すべきことなどを課題として挙げている。

一般薬連合会が発足‐セルフM振興を目指す

 日本OTC医薬品協会などOTC薬5団体による新組織「日本一般用医薬品連合会(一般薬連合会)」が7月、発足した。

 参加団体は全国家庭薬協会、全国配置薬協会、日本医薬品直販メーカー協議会、日本漢方生薬製剤協会、日本OTC医薬品協会で、初代の会長には上原明氏(大正製薬会長)が、副会長には三輪芳弘氏(興和社長)が選任された。

 日本は、急速な少子高齢化社会の中で、一般薬を活用したセルフメディケーションの役割への期待が大きく、一般薬業界が果たすべき責務がますます大きなものになっており、業界としてまとまった意見を外部に発信していくことが必要なことが背景にあった。また、政府や行政機関等からの要望もあった。

 11月には、一般薬連合会として、厚生労働省に対しセルフメディケーション振興に関する要望書を提出した。

ポイント付与は一応決着‐“原則禁止”もなお火種

 一昨年から問題になっている、大手チェーン薬局などが実施している、保険調剤支払い時のポイント付与に関し原則禁止とすることで一応の決着を見た。

 11月2日の中央社会保険医療協議会で了承されたもので、「保険医療機関及び保険医療療養担当規則」と「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」を改正し、来年4月に施行される。

 ポイント付与問題に関しては、今年1月に厚生労働省が自粛を求める通知を出した。しかし、その後もサービスが継続されて、10月の中医協で日本薬剤師会常務理事の三浦洋嗣委員が不快感を示していた。

 中医協では、▽ポイント付与は医療保険上ふさわしくない▽患者の薬局選択は調剤・薬学的管理・服薬指導の質を高めることが本旨――といった厚労省の考えを支持した。

 ただ、クレジットカードや汎用性のある電子マネーの使用に伴うポイントは、患者の利便性を考慮して「やむを得ないもの」として引き続き容認していることから、これらが今後の火種になることも予想される。

薬事分科会規定を見直し‐新薬などは部会で了承

 薬事・食品衛生審議会薬事分科会は、新薬・医療機器の承認手続きの分科会規定の確認事項を改正し、分科会の審議品目を、適用・毒性・副作用などの点で、慎重な審議が必要なものに限定する新ルールを、4月から適用した。

 これまで、新規の作用機序や新有効成分を含有した医薬品などは、部会を通過した後、分科会で再度審議することになっていた。しかし、分科会の審議の対象範囲を見直すことにより、新規作用機序の品目なども分科会の報告扱いとなり、部会での了承を得た時点で承認手続きに入れるようになった。ただ、厚生労働省は、正式承認の時期をこれまで通り年4回で変えていない。

 分科会審議の対象となる品目は、社会的にも影響することが想定されるため、原則として、パブリック・コメントを実施することになっている。

チラーヂンが製造停止‐大震災で工場被災が原因

 3月11日に起きた東日本大震災の影響により、甲状腺ホルモン剤「チラーヂンS」(成分名=レボチロキシンナトリウム)の製造がストップした。

 製造販売元のあすか製薬いわき工場(福島県いわき市)が被災し、製造設備や立体倉庫が損傷を受けたためだ。

 チラーヂンSの供給ストップは、甲状腺機能低下症患者などの生命に直結するため、同社はいわき工場の復旧に全力を挙げる一方、同じ成分であるレボチロキシンナトリウムを供給する代替措置をとった。供給が再開されたのは3月30日で、当面医療に必要な供給量は確保されたものの、引き続き代替措置が取られた。

 いわき工場が全面復旧したのは8月で、内用薬93品目、注射薬30品目、外用薬10品目の全製品の供給体制が全面稼働した。

壊滅的“0.13%”ショック‐医薬品卸の営業利益率

 主要医薬品卸の2012年3月期中間決算は、予想通り増収減益となった。日本医薬品卸業連合会の会員96社の経営状況調査では、2010年度の営業利益率は、別所芳樹会長をして「壊滅的」と言わしめた0・13%という悲惨な数字が現実となって現れた。

 医薬品卸の経営を語るとき、以前のような規模の拡大などは端に追いやられ、今では“収益”をいかに確保するかが最大の課題になり、主要卸は各社各様の収益確保策を打ち出し始めている。大きな課題に流通改善への取り組みがあるが、概ね総価取引の解消を必要とすると共に、理想は単品単価としながらも、最低でもカテゴリー別での価格交渉を求めていく方針を示している。

武田薬品、真のグローバル企業へ‐20年メドに実現を

 武田薬品はスイス・ナイコメッドの買収完了を受け、「2020年をメドに、日本の製薬企業として初めて、真のグローバル企業を目指したい」と方向性を示した。今後は、ナイコメッドの完全統合に向け、事業運営体制の強化や人材の多様化を進め、3年以内に統合を完了させる計画。その上で、研究開発の生産性向上、新興国市場のプレゼンス拡大に取り組み、グローバル企業への変革を実現していく考えだ。

 同社は、ナイコメッドの買収完了を受け、10月1日から統合プロセスを開始し、経営幹部の選定や世界約70カ国・地域の責任者の任命などに着手。その一環として、研究開発統括職と米欧・北アジアの販売統括職を廃止し、チーフメディカル&サイエンスオフィサー(CMSO)、チーフコマーシャルオフィサー(CCO)を新設した。

分業率は60%を堅持‐1枚当たり金額は微減

 医薬分業率が2年連続して60%を上回った。日本薬剤師会の「保険調剤の動向2010年度調剤分」で明らかになった。また、70%以上の自治体は10県あり、秋田県では初めて年度でも80%台を達成した。

 調剤件数は5億4520万3847件(前年度比4・3%増)、処方箋枚数は7億2939万3917件(3・9%増)、調剤金額は5兆7591億7748万円(3・6%増)と、いずれも前年度比でプラスが続いている。医薬分業率は63・1%で、初めて60%の大台に乗った前年度よりさらに2・4ポイント上昇した。

 日薬では、分業率が順調な進展を見せていることについて、「地域で一人ひとりの薬剤師が努力した成果が現れた数字だ。国民の中に医薬分業が浸透し、それが処方側にも理解されてきている結果」と評価している。

 ただ、1枚当たり金額、1件当たり金額などは微減している。1枚当たり金額を見ると、全国平均は前年度より0・3%減の7896円となり、この10年間では初めての減少となった。



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