薬害C型肝炎訴訟は2月に入り、福岡、大阪、東京の各訴訟で原告と国との間で和解が成立した。被告企業も対応を急ぐべきところだが、懸念されるのは、政府が約束している薬害再発防止策の検討、国と原告との合意事項である事件の検証への関心が薄れているように思えることだ。
早急に手を打てる対策もあるだろう。事件の検証の結果、打たなければならない対策も出てこよう。検証には相応の時間がかかることを考えれば、防止策の検討も、事件の検証も早急に着手する必要がある。
薬害C型肝炎被害者救済法の成立前後にあった1月は、福田康夫首相が参議院本会議で「薬害を繰り返してはならないという決意の下、命の尊さを認識し、製薬企業に対し、迅速かつ的確な措置がとれるような体制のあり方などを含め、医薬品行政の見直しに取り組む」と、政府が使いたがらない「薬害」という言葉をわざわざ使って、政府の問題に対する姿勢を明確に示していた。
舛添要一厚生労働相も、衆参の厚生労働委員会で、再発防止策を「原点に立ち返って検討したい」と何度も強調。国会では副作用情報をより早く収集・分析し、医療現場に情報提供することや、人員拡充などの課題が挙がった。また舛添厚労相は、被害者との和解の基本合意成立後「早急に第三者機関の設置を実施に移したい」と、急ぐ意向を示していた。
与党の自民党も、社会保障制度調査会に「薬事政策のあり方検討会」を設置し、再発防止策の検討に乗り出した。 心強いものがあった。しかし、今なお政府・与党の具体的な動きは見えてこないのは、どうしたことだろう。
自民党の検討会も非公開で、厚生労働省から2回にわたり、薬事行政の現状と、過去の薬害で採られてきた対策の説明を受け、3回目は薬害肝炎原告・弁護団から意見聴取と、勉強段階にとどまる。会合終了後の記者への説明も不十分で、今後どのように、何を検討していくのか説明がない。
事件の解決に向けては政府、与野党、マスコミが、あれだけ連日、慌ただしい動きを見せ、救済法成立後の国会答弁でも再発防止に向け明確な姿勢を示していたにもかかわらず、月を追うごとに動きがなくなっていると受け取られても仕方ない状況である。通常国会のハイライトである予算委員会でも、薬害再発防止についてはほとんど取り上げられていない。
被害者側には、特に最近の薬害エイズの検証は十分になされず、被害防止策にも生かし切れていないという思いがある。その思いを汲み取るなら、政府の姿勢を質し、言質を取るくらいの姿勢はあってしかるべきと考える。
引き続きの年金問題に、中国製餃子の中毒問題と、より生活に近いところの不安に、関心が高まることは理解できる。最新鋭のイージス艦による漁船衝突事故も確かに大きな問題だ。
しかし、薬害もまた、何度となく国が再発防止を誓いながら、なおかつ引き起こしてきた問題であることに思いを致したい。対策なしには、再び起きてしまうかもしれない、明日の被害の芽が育っているかもしれないという、明日の危機と考えていい問題であるはずだ。そういう目に見えない危機にも、政府、国会議員には、ぜひ気を配ってほしい。