
米食品医薬品局(FDA)は12月13日、魚油に豊富に含まれるイコサペント酸エチル(EPA)製剤であるVascepa(商品名)の適応を、既にスタチンを使用している心血管疾患や糖尿病などの高リスク患者へと拡大することを支持する声明を発表した。
Vascepaは、既に高トリグリセリド血症治療薬としてFDAの認可を受けている。今回、FDAの諮問委員会は、血中トリグリセリド(TG)値が150mg/dL以上で、心血管疾患や糖尿病などの複数のリスク因子を抱える高リスク患者への同薬の適応拡大を承認した。FDA医薬品評価研究センター(CDER)のJohn Sharretts氏は「今回の適応拡大により、TG値が高く、心疾患や脳卒中、糖尿病などの重要なリスク因子を持つ患者は、心血管イベントの二次予防を目的とした補助治療の選択肢として同薬を使用することができるようになる」と説明している。
Vascepaは、高純度なEPA製剤で、1カ月分の費用はおよそ300ドル(約3万3,000円)とされる。今回の承認は、今年の11月に米国心臓協会(AHA)年次集会で発表されたEVAPORATE試験の結果を受けたもの。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授のMatthew Budoff氏の報告によれば、この研究では、スタチンへのEPA製剤の追加で、冠動脈プラークを表す4つのマーカーで大幅な進展抑制が認められたという。
同試験は現在も進行中であり、今回は9カ月後の中間報告。最終的に18カ月後の結果が報告される予定だ。冠動脈狭窄が1枝以上に認められ、スタチンなどを服用しても血中TG値が高かった患者80人を対象に、高用量EPA製剤群またはプラセボ群(各群40人)にランダムに割り付けて比較した。
研究開始時と9カ月後の時点でCT検査を実施し、冠動脈プラークの進展を追跡した結果、EPA製剤群では、対照群と比べて総プラークの進展率は42%減少し、新たな石灰化プラークは89%、線維性プラークは57%、非石灰化プラークは19%それぞれ進展率が減少していた。
この研究には関与していないモナシュ大学(オーストラリア)心臓病学教授のStephen Nicholls氏によると、EPA製剤の服用で動脈内のプラークが消失するわけではないが、プラークが蓄積するのを遅らせることができるという。同氏らは、その理由として、プラーク形成に寄与するTG値が低下する以外にも、魚油の抗酸化作用や抗炎症作用が関与する可能性を挙げている。
これまでのEPA製剤に関する研究では、プラーク進展抑制効果について一致した結果が得られていなかった。この理由について、Nicholls氏は「魚油サプリメントの使用量が十分ではなかったためではないか」と指摘している。一方、同じく専門家の一人で米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部予防医学部長のDonald Lloyd-Jones氏は「現在、他にもいくつかの臨床試験が進行しており、近いうちにさらに詳しいエビデンスが得られるはずだ」と期待を示している。(HealthDay News 2019年12月16日)
(参考情報)
Press Release
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-use-drug-reduce-risk-cardiovascular-events-certain-adult-patient-groups