社会保険診療報酬支払基金は、審査の質向上の一環として、電子レセプトで請求された医薬品の、コンピュータによるチェックシステムを充実させている。今年2月から適応のチェックを自動で行うシステムの運用を開始し、3月には延べ26万品目に疑義付せん貼付を行っている。10月からは禁忌チェックシステムも稼働させる。
支払基金が処理するレセプトの電子化率は、オンライン請求と電子媒体による提出を合わせると、3月時点で件数ベース75・6%と、全体の4分の3を超える。特に調剤は99・9%に達しており、医科では病院が400床以上で99・4%、400床未満で96・0%に普及。診療所でも71・6%まで進展している。
電子レセプトの場合、紙媒体では難しかった「全レセプトの審査」が、少なくともコンピュータシステム上では可能になる。そのため支払基金は、電子レセプトについて、基本的に全てシステムチェックを行い、目視による審査は「人でなければできない審査」に限定していく考えを示している。コンピュータによる医薬品チェックも、こうした方針に沿った対応だ。
現在実施している適応のチェックは、医科の出来高レセプトが対象。ターゲットとなる医薬品は、電子請求用医薬品コード全体の4・8%に相当する926品目で、原則として傷病名との対比に馴染みにくい、漢方製剤や抗生剤などは除かれている。
具体的な仕組みは、添付文書の情報に基づいて医薬品ごとに適応傷病名、投与上限量、投与制限日数のチェック用マスターを構築し、自動で適否を確認するというもので、マスターの設定範囲を超える医薬品には画面上で疑義付せんが貼付される。
紙レセプトと異なり、網羅的に対象項目をチェックするため、目視では見落とす可能性のある事例も、確実に確認できる。ただし、最終的な審査決定については、プログラムチェックの結果を支払基金の職員が確認した上で、審査委員が個別に医学的な判断を行って結論を出す。
直近の3月は、医科出来高レセプト2902万件の請求を受け付け、このうちターゲットとなる医薬品が記載されていたレセプト267万件をチェックしたところ、延べ387・9万品目の6・6%に当たる、延べ25・8万品目に疑義付せんが貼付された。このうち、1・5万品目が審査で査定され、3048件のレセプトが返戻となった。