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【彩の国にいる37人の薬剤師】美味い町中華を出す薬局の薬剤師 越谷市薬剤師会・奥津剛さん

2024年04月09日 (火)

患者と家族のような関係に

奥津剛さん

<私ってこんな薬剤師>
昭和の薬剤師
<かかりつけ薬剤師像>
患者と家族のような関係

 「薬局の特徴?チェーン店とは違う、うまい町中華を出す薬局だ」。越谷市薬剤師会副会長を務め、まごころ薬局を切り盛りする奥津剛さん。地域の人たちからは「大将」「マスター」と親しみを込めて呼ばれている薬剤師だ。

 オンラインやDX対応について話を振ると、「LINEじゃ気持ちは伝わらない。患者さんと会って話せるんだったら、話をしないともったいないじゃない」と話す。

 埼玉県三郷市で開局し、2013年12月に越谷に移転した。朝7時から営業している。奥津さんが“剛”なら、同じく薬剤師である妻の里香さんは患者を包み込むような“柔”のおしどり夫婦だ。患者はそんな2人から「行ってらっしゃい」と送り出される。

 薬局名の“まごころ”は、剛さんの祖母が好きだった言葉という。まごころの精神を大事に地域住民に対しては健康増進からサポートしている。薬局周辺は住宅地で医療機関は少なく、処方箋を応需する薬局としては恵まれた立地とは言えないが、約20km離れた場所から患者が訪れてきてくれたり、近隣の住民からは野菜やお菓子、料理などが届けられる人気の薬局となっている。

 奥津さんが星薬科大学薬学部卒業後に選んだのは製薬企業の営業職だった。人たらしの資質は製薬企業時代に医師との対話でさらに磨かれた。「バブルの頃に男芸者の世界でやってきた。相手の懐に入るのは得意」と笑う。

 口を利かないような患者に対しても、「いいゴルフウェア着てますね」「ゴルフやるんですか」「今度、ゴルフ教えて下さいよ」と切り込み、今では意気投合する仲となっている。

 患者とは「家族のような関係」を追求してきた。独居の高齢患者から「坐薬を入れてほしい」との電話があれば、深夜でも訪問する。こうした患者フォローは、「自営の薬局だからできること」と言う。

写真右は奥様の里香さん

写真右は奥様の里香さん

 その一方で、地域医療の責任を果たさない医療機関や薬局、薬剤師には怒りを隠さない。医薬品不足の問題は今も続いており、困り果てた患者が朝7時から薬を求めてまごころ薬局を訪れてくる。

 奥津さんは「オーナー薬剤師は少なくなっている。勤務薬剤師は転勤になってしまう。このままだと地域医療に責任を持てない。自営の薬局がなくなるのは地域の喪失ではないか」と訴える。

 越谷市薬剤師会の仲間に対する信頼は厚い。新型コロナウイルスワクチン接種では薬剤師会が主導し、30万人の市民に対するワクチン接種を円滑に行うことができた。9月の日本薬剤師会学術大会では薬剤師会として発表も行う予定だ。

 奥津さんは「埼玉東部エリアを牽引する薬剤師会でありたい」と話す。個人会員制度を創設したのも、「若い薬剤師は社会貢献したくないわけではなく、その機会がないだけ」と環境整備に取り組む考えだ。

 高校時代は、甲子園を目指していた野球少年だった。患者の中には、野球を教えた子供もいる。「いつか、この店からメジャーリーガーを出そうと思ってるんですよ」。昭和の親父らしく大きな夢も語ってくれた。

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