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【彩の国にいる37人の薬剤師】キッチンカーで身体にいい食事提供 秩父郡市薬剤師会・町田一美さん

2024年06月25日 (火)

過疎地域で住民の生活支える

町田一美さん

<私ってこんな薬剤師>
地域住民の隣にいる薬剤師
<かかりつけ薬剤師像>
人と人をつなげる薬剤師
<趣味>
焼き芋

 「薬剤師としてではなく、1人の人間として、地域の人と向き合うことが大事」――。秩父郡市薬剤師会理事でおがの薬局の管理薬剤師を務める町田一美さんは、埼玉県内でも高齢化・過疎化が進行する秩父郡小鹿野町で地域住民の健康増進をサポートする。

 新型コロナウイルス感染拡大で家から外に出歩かない、住民間で会話もしない状況を危惧し、おがの薬局で始めたのが車内に調理設備を備えた「キッチンカー」だ。2022年度みんなが選ぶ薬局アワードで特別審査員賞を受賞した。

 キッチンカーを運転して、町内各地に出向き、地域住民に対して健康に良い食事を提供する活動を続けている。集まった地域住民にはポリファーマシー対策などの健康講話も行う。

 町田さんは、「薬局は本来、患者さんとお茶を飲みながらいろんな話ができる場所。コロナで薬局に来てもらうのが難しくなったので、私たちが地域に出向き、そこで人を集めるのがいいのではないかと思うようになった」と話す。

 もともと大学は工学部志望だったが、薬学部へと進んだ。卒業後は医薬品卸に就職し、その後に公立病院、民間病院の薬剤師としてキャリアを積んだ。

 目にしたのは、病院を退院しても再入院する患者の姿だった。「自宅での生活に問題がある患者が多いのではないか」との問題意識を持つようになり、ケアマネージャーの資格も取得。在宅医療に対する熱い思いが湧いた。

 ただ、当時は在宅医療に参画する薬剤師は少なかったため、積極的に学会に参加して必要な知識を吸収した。副次的産物として、在宅医療に関心のある薬剤師の仲間とつながることができた。

 薬剤師会会営薬局であるおがの薬局で働き始めて13年。「過疎地では自助、公助、互助、共助に取り組んでいる。その分、地域住民が1人でも抜けてしまうと生活できなくなってしまう」と過疎の現実を語る。「過疎地に必要なのは、薬剤師ではなく生活を見てくれる人。だから、薬局に来てもらうではなく、行かなくてはと思う」

ペーシェントサロンで焼き芋をふるまう

ペーシェントサロンで焼き芋をふるまう

 実際、過疎化に直面している地域は多い。キッチンカーの取り組みを薬局アワードに応募したのも「私たちのアイデアを全国に知ってもらい、過疎地域でもこんなことができると思ってもらうのが大事だから」。地域から成功事例を発信することで高齢化・過疎化問題の突破口にしていくとの思いが強い。

 薬剤師会理事として小鹿野町や医師会とも協力し、地域連携を進める傍ら、個人の活動では医療者と患者が対話し、地域医療のあり方を考える「ペーシェントサロン」も開催する。「患者さんが医療者に遠慮をしている。自分の言いたいことが言えなくてお任せ医療になっている。患者中心医療、患者参画医療の流れからは遅れている」と話す。地域の中でのつながりから、生活や医療を支えていく。

 趣味は焼き芋。始めて3年が経つ。無農薬で栽培した芋をペーシェントサロンでふるまう。

 「芋にもいろんな品種があり、どのくらい温度で焼けばいいのか、機械、糖度、熟成がどのくらいであれば美味しくできるのかを試している。そこは実験で面白いですよ」。豊かな自然に囲まれた生活もしっかりと楽しんでいる。

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