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【彩の国にいる37人の薬剤師】サッカーでインターハイ出場した薬剤師 坂戸鶴ヶ島市薬剤師会・髙尾慶太さん

2024年07月17日 (水)

面薬局として在宅医療支える

髙尾慶太さん

<私ってこんな薬剤師>
人生の最期まで関わる薬剤師
<かかりつけ薬剤師像>
薬だけではなく健康の相談事も相談してくれる関係
<趣味>
ゴルフ、子育て

 「高校時代はサッカーで、インターハイに2回出場しました。プロサッカー選手を本気で目指していました」――。坂戸鶴ヶ島市薬剤師会が推薦した薬剤師は髙尾慶太さん。幼少期からサッカーを始め、埼玉県では名門である西武台高校のフォワードとして活躍した。今では在宅医療に情熱を注ぐ。

 高校3年夏のインターハイは1回戦負け。サッカーで大学に推薦入学することもできたが、サッカー選手になるという夢は諦めた。「サッカーしかやってこなかった人間に何ができるだろう」。そんな時にテレビで薬剤師が出演しているのを目にして「よし、薬剤師になろう」と家族の前で高らかに宣言した。

 「お前では無理」。家族は猛反対し、教師からは「薬学部に入るのには2年かかる」と止められた。周囲からの辛辣な言葉が髙尾さんを奮い立たせた。引退後は睡眠時間を削って勉強し、群馬県の高崎健康福祉大学薬学部に合格。入学後も「取り残されないように必死で食らいついた」と勉強に励み、念願の薬剤師になることができた。

 卒業後は病院薬剤師として勤務した。病院では多くの患者が亡くなるものの、看取りに立ち会うのは医師や看護師だけであることにやるせなさを感じた。「投薬だけで終わる業務ではなく、患者さんの人生の最期まで関われる仕事がしたい」。薬局に転職し、在宅医療に出会った。

 在宅専門薬剤師として朝9時から深夜0時まで働く毎日で、「正直つらかった」と振り返る過酷な環境にも、サッカーで培った体力と精神力を武器に乗り切った。

 在宅患者の看取りに何度も立ち会った。普段から在宅対応してきた患者の死。夫の死を受け入れられない妻が「今、目動きませんでしたか」「先生、本当に亡くなってますか、調べてください」と言いながら、頬と頬を当てて最後の触れ合いをする。

 「薬剤師として、奥様への対応を含めどう動けばいいか分からず固まってしまった」。最後の瞬間に立ち会いたいという思いで薬剤師になったのに、支えの言葉すらかけられない情けなさを感じることもあった。

 そんな時に、在宅診療医師の言葉に救われた。「自分だって人生の先輩に言葉をかけるのは難しい。僕は医者として声かけをし、君は薬剤師として声かけをすればいい。生きている間にどれだけ在宅で患者さんと交流してきたかが大事だから。気にするな」。背負っていた重荷が少しだけ軽くなった瞬間だった。

 6月に勤めていた薬局を退職し、独立して開局する。門前薬局ではなく面薬局として在宅医療を安心して受けられる環境を作ることを目標に掲げる。坂戸鶴ヶ島市薬剤師会は坂戸市、鶴ヶ島市、毛呂山町、鳩山町、越生町を管轄した地域薬剤師会で横の連携もある。

 「生まれ育った地域を良くしていきたいと考える医療関係者が多いので協力して市全体を盛り上げていきたい」と意欲的だ。

 3児の父で休日は子供と遊ぶ。サッカーからは離れ、最近ゴルフも始めた。「週に1回は、お世話になっている先生と打ちっ放しに行ってます。楽しいです」と笑う。

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