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【彩の国にいる37人の薬剤師】険しい坂も駆け上がる薬剤師 熊谷薬剤師会・比留間頼栄さん

2024年06月03日 (月)

コミュニケーションで関係構築

比留間頼栄さん

<私ってこんな薬剤師>
コミュニケーションを大事にする薬剤師
<かかりつけ薬剤師像>
健康に関して相談ができる身近な専門家
<趣味>
トレイルランニング

 「患者さん自らが健康増進や薬のアドヒアランスを高める行動に動いてもらえるよう、コミュニケーションを大事にしています」――。そう話すのは、熊谷市薬剤師会会営薬局佐谷田店で管理薬剤師を務める比留間頼栄さんだ。

 生まれも育ちも熊谷市。野球に明け暮れるも3年連続で骨折を繰り返すなど、「身体は弱かった」青年だった。薬剤師を目指したのは薬という化学に対する興味がきっかけで、大学薬学部在学中に患者をサポートする薬剤師の面白さに気付き、卒業後から熊谷市薬剤師会会営薬局で勤務している。

 比留間さんの武器は伝える技術だ。駆け出しの頃は、患者に薬の飲み方などを一生懸命に説明しても正しく飲んでくれないなど空回りした時期もあった。

 転機になったのは、熊谷薬剤師会の勉強会での講演経験である。どうしたら耳を傾けてもらえるか、話の構成や声の強弱などを工夫し、講演経験を重ねた結果、聴衆の視線が比留間さんへと徐々に集まるようになった。患者への服薬指導にも生かされた。

 一方、在宅での看取りでも、患者とのコミュニケーションを意識することが必要と学んだ。医師からは、「薬剤師はモノ(調剤)に時間をかけるべきではない。なるべく薬はシンプルにして患者さんには笑顔を見せてあげて」との言葉をかけられた。

 「在宅の看取りでは、輸液の混注などに時間をかけることが患者さんのためであり、薬剤師の仕事」と思っていた比留間さんにはハッとさせられた瞬間だったという。

 佐谷田店で働く同僚の薬剤師は癌患者を自宅で看取った。亡くなって数日経った後、比留間さんが自宅まで薬を引き取りに行った際、家族から患者の遺言を受け取った。

 「薬剤師さんとたくさん話ができて、とても良かった。ありがとう。このメッセージを薬剤師さんに伝えてほしい」

 薬剤師としてではなく1人の人間として「とても嬉しかったし、自分もそう言われたいと思った」と仲間の活躍を誇らしく感じている。

 熊谷薬剤師会の専務理事として十数年続けている「薬と健康フェア」や日本3大祭りの一つ「熊谷うちわ祭り」における薬物乱用防止活動など、様々な事業にもチャレンジする。

 比留間さんは「自治体と連携してオール薬剤師で地域活動を実施していく必要がある。薬剤師会のメリットは地域の情報共有ができること。顔が見える関係を作っていきたい」と地域に発信していく考えを強調した。

トレイルランニングでは入賞も

トレイルランニングでは入賞も

 比留間さんの趣味はトレイルランニング。「不整地の細い道や森、山、川を颯爽と駆け抜けていくのは面白い」と冒険心がくすぐられるのが魅力という。険しい山を走り続けられる秘訣は「登り坂を登り坂と思わないこと」と明快だ。

 一昨年出場した大会では40代の年代別1位になったほどの実力を持つが、「表彰式があるとは知らずに帰宅してしまった。賞状やトロフィーをもらうことができなかったので、次は賞状をもらいたい」と笑う。

 熊谷市内の一部では無薬局地域が存在するなど継続的に医薬品を提供していくためには、解決しなければならないハードルがある。「トレイルランニングと同じように、止まってしまったら、そこから動き出すことは難しい。動き続けていきたい」とゴールに向かって駆け上がる。

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