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【彩の国にいる37人の薬剤師】140年以上続く薬局の薬剤師 深谷市薬剤師会・中里範子さん

2024年08月08日 (木)

薬局は「よろず相談所」に

中里範子さん

<私ってこんな薬剤師>
患者の求めていることを察し、話を聞ける薬剤師
<かかりつけ薬剤師像>
地域住民から相談される薬剤師
<趣味>
読書

 「患者さんが何を求めているかを察して、話を聞いてあげる。薬局はよろず相談所であるべきですね」。こう話すのは、深谷市薬剤師会会長を務める中里範子さんだ。

 深谷市を起点に熊谷市、本庄市など北部埼玉を中心に7店舗を経営する萩原薬局の社長で、創業は1881年。140年以上の歴史がある。

 共立薬科大学(現慶應義塾大学薬学部)を卒業し、一時期製薬企業に勤めたが、その後萩原薬局で薬剤師として経験を積み、1996年には7店舗のうちの1店舗である同仁薬局を開局した。

 「薬局はよろず相談所であるべき」との考えは子供の頃に受けた祖父の教えによるものだ。

 薬局が地域の中でも特別な存在だった時代に、「祖父からは火鉢に当たりながら来局した人と話をし、次の人が来るまでは薬局にいるようにと言われていましたね」と接遇の重要性を教わったという。

 さらに、「地域の人から『道を聞くなら薬局に』と思われるように、薬局は何でも知っていないといけないとも言われて育ちました」と語る。街の科学者であるための心得も学んだ。

 令和の時代においても明治時代から続く精神を継承して地域に密着した薬局を追い求める。「今でこそ処方箋調剤の時代になりましたが、何でも聞きに来てもらえる薬局でありたいです」と話す。

 従業員を大事にする。患者と同様に女性社員がいきいきと働ける環境づくりにも取り組み、働く女性を応援する企業として埼玉県のウーマノミクスプロジェクトによる「多様な働き方実践企業」として認定されている。深谷市で開かれる七夕祭りや夏祭りでは、中里さんが先頭に立って社員と一緒に地域での祭りを盛り上げる。

 生まれ育った深谷市をこよなく愛する。深谷ネギに代表されるように野菜が地域の特産品だが、「ブロッコリーが一押し」だとか。深谷市薬剤師会会長としても地域の人たちと触れ合い、「他地区にはない取り組みが多い」とアピールする。

 深谷市が開催する市民向け講座では薬剤師会理事が市内各地に出向き、集まった高齢者に対して薬の使い方などの説明を行っている。その回数は年10回以上と多く、今後は「理事だけではなく一般会員にも市民向けに説明してもらう機会を作りたい」と話す。

 1人薬剤師の薬局が増える中、会員間の情報共有に向けては、コミュニケーションアプリ「LINE」を用いたオープンチャットも始めた。

 薬薬連携では、埼玉県北部の基幹病院である深谷赤十字病院を中心に、深谷、熊谷、行田、本庄市児玉、寄居、秩父郡市の薬剤師会と中核病院で「埼玉県北部薬薬連携協議会」を組織し、勉強会や研修会を開催する。

 中里さんは「地域薬剤師会は横のつながり、情報共有が大事」と話し、若手薬剤師には「学校薬剤師になりたい、実務実習の指導薬剤師になりたくてもどうすればいいか分からないとの声を聞いたので、キャリア形成につながる情報をきちんと伝えられる会にしたい」と訴える。

 趣味は読書。「中学生の頃から毎晩読書する習慣は欠かしたことがない」という。「本屋に行くことが好きで本を手に取ってページをめくるのが好き。本屋大賞に選ばれる本はほとんど読みました。歴史小説は苦手ですが克服したいですね」。忙しい日々を過ごしても、読書の楽しみだけは今後も続けていく。

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