東レとバイオIT企業のライフィクスは23日、医薬品代謝物を解析するソフトウェアの共同開発を行うと発表した。ライフィクスが開発した多変量解析ソフトに、東レが医薬品開発で培った微量代謝物の解析技術を追加することで、新薬開発の迅速化と成功確率の向上を目指す。今後、両社で共同開発を進め、12月に販売する予定。
新薬開発における安全性重視の傾向が高まる中、既に米FDAは、探索研究段階でヒト代謝物の安全性確認を要求してきている。ただ、これまで膨大な化合物の代謝物を評価する手段が確立されていなかったことから、早期に安全性を見極めることが、探索研究の大きな課題となっていた。
そこで今回、東レとライフィクスは、医薬品代謝物を迅速・正確に解析し、安全性を早期に見極め、成功確率を向上させるソフトウェアが必要と判断。医薬品代謝物解析ソフトの共同開発を進めることで合意した。
東レは、抗血液凝固剤「ドルナー」、そう痒症改善剤「レミッチ」の開発を通じて、微量代謝物の解析技術を培ってきた豊富な経験がある。一方、ライフィクスは、バイオITの基盤技術を保有し、測定試料間の違いを分子イオンレベルで解析する多変量解析ソフト「サインポストMS」を開発している。
こうした両社の強みを生かし、共同開発では「サインポストMS」の多変量解析を応用し、新たに医薬品代謝物の解析機能を追加。医薬品代謝物解析ソフトとして最適化していく方針だ。これにより、解析期間が2~3カ月から数時間と大幅に短縮され、高速な代謝物解析が実現する。これまで一つひとつの薬物について目視で行っていた代謝物解析が、大量・迅速に解析できるため、安全性の早期の見極めに貢献すると期待される。
今後、両社で共同開発を進め、12月にはライフィクスが新製品として発売する予定。価格は「市場性を睨んで決めてきたい」(ライフィクス金澤光洋社長)としているが、初年度の目標売上高は3~4億円を見込んでいる。