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OTC薬も副作用DB化推進を

2010年08月06日 (金)

 厚生労働省はこのほど、医薬品による副作用への迅速な対応を目的に、医療機関の電子カルテデータをもとにした医薬品副作用データベース構築構想を打ち出した。同省では、2015年に1000万人規模のデータベースの運用開始を目指すとしている。

 これまで、医療用医薬品の副作用のデータベース化は、医薬品医療機器総合機構を中心に進められてきたが、医療機関の電子カルテを活用し副作用を収集することで、より迅速に有効的な副作用対策が採られることが期待される。

 他方、OTC薬も含めた副作用のデータベース化についてはどうか。未だ、具体的な施策が示されていないのが現状だ。その理由として、OTC薬は副作用の情報収集が難しい上に、医療用医薬品に比べ配合製剤が多く、副作用との因果関係がトレースしにくいことが挙げられている。

 とはいえ、医療現場において医薬品が単剤で投与されている症例はほとんどない。さらには、医療機関にかかっている患者が、薬局でOTC薬を購入する例も少なくない。このため、多剤併用の中に、OTC薬も含めた副作用のデータベース化が、必要不可欠ともいえるだろう。

 では、OTC薬の副作用情報を収集するには、具体的にどのような手立てが考えられるか。日本薬剤師会が02年から、毎年一つのテーマを設定し、全国の薬局の協力を得て、継続的に医薬品の調査を実施しているDEM事業の活用もその一つだ。販売量の多いOTC薬をピックアップして情報収集を行うことで、薬剤師のOTC薬に対する副作用への関心が高まるだろう。

 また、これまで一括りにされていたOTC薬による有害事象が、適正使用の中で起こったものなのか、使い方の誤りで生じたものなのか、などの原因究明にもつながる。

 薬歴におけるOTC薬服用に関する記載の充実も期待できるので、ひいてはOTC薬を含めた多剤併用の副作用データベース化にも寄与する。

 第2類薬、第3類薬の使用実績データを幅広く集めるには、薬剤師と登録販売者との連携が必須となるのはいうまでもない。

 先般、第1類薬販売時の薬剤師による説明不足が物議を醸したが、OTC薬の副作用データベース構築により、販売時の説明と同様に、販売後の情報収集の重要性もクローズアップされてくるだろう。

 これまで、OTC薬販売時の説明にのみに目を奪われがちだったが、市販後の情報収集の重要性を実証することで、追跡調査が不可能な医薬品のインターネット販売の危険性も、国民に理解されるようになると思われる。

 医薬品の安全性は、有効性とは異なり、市販後の調査によって、その特性が明らかにされていく。その成果の一例として、最近、副作用データベースに報告されている複数の薬剤併用例を、統計学的手法で解析し、被疑薬を推定する研究が注目を集めている。

 この研究により、単剤投与では比較的安全と考えられていたアセトアミノフェン、エリスロマイシン、イブプロフェンなどの薬剤でも、複数の薬剤と併用することでSJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)の被疑薬となることが報告されている。

 全ての医薬品の安全性を科学的に検討する上で、必要不可欠となるOTC薬の副作用データベース化については、ぜひ、開局薬剤師に中心的な役割を担ってほしいと思う。



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