「企業間連携機能」を追加‐提携先と進捗管理が可能に

山上氏
キヤノンITソリューションズは、製薬企業の安全性情報進捗管理システム「PVリンク・レポートマネージャー」に、製造委託先企業など提携先との間でも進捗管理を可能とする「企業間連携機能」を新機能として追加した。企業間での安全性情報の連絡、評価依頼を一元化するなどして業務効率化を実現した。新機能はユーザーの声を反映したものだとして、ビジネスソリューション統括本部ビジネスソリューション営業本部の山上達也氏は「システムに対する要望を毎年収集し、反映する形で機能を拡張していきたい」と同システムの方向性を示す。
安全性情報に関する現場の課題解決に注力してきた同社。2017年に発売したMR向け副作用報告支援システム「PVリンク・カメラレポート」では、出先でスマートフォンなどデバイスで詳細調査票等を撮影し、PDFファイルとして迅速に安全管理部門に報告可能とし、FAXの誤送信や情報漏洩のリスクを防止するサービスを提案した。
翌年にリリースした安全性情報進捗管理システム「PVリンク・レポートマネージャー」では、安全性情報の報告から安全管理部門による進捗管理まで必要機能をパッケージ化。各業務プロセスに沿った標準的な機能を搭載し、個別のシステム開発にかかる時間やコストを短縮化して安全性情報管理にかかる業務の効率化を実現した。21年には、同社が提供するITインフラサービス「SOLTAGE(ソルテージ)」上で、クラウド版である「PVリンク・レポートマネージャーCloud」を上市し、インフラの構築・保守・運用やソフトウェアパッケージの購入なしにレポートマネージャーの機能を使用可能とした。
一方、安全性情報に関する収集経路の拡張を望む声が現場から多く寄せられていた。また、企業間の連絡はメールやFAXで行われている場合が多く、各社ごとに報告方法・期限が異なる、管理台帳が個別に存在している、進捗管理が属人化するなど、管理が煩雑で報告漏れのリスクが存在する現状もある。
そのため、同サービスの新機能として、9月から「企業間連携機能」を追加した。従来は自社の営業部門だけを情報収集ルートとしていたが、製造委託先企業など提携先との間で進捗管理を行うことが可能となった。
機能を具体的に見ると、企業間での安全性情報の連絡や評価依頼を一元管理し、過去の経緯や現在の進捗状況の把握が容易になった。さらに、評価依頼や再調査依頼のメールテンプレート機能で手間を削減し、業務を効率化。誤送信防止を目的として製品に基づく宛先検索機能、処理漏れや報告漏れを予防するアラート機能も備えている。
PVリンクシリーズについて、山上氏は「ユーザーと共に成長させていくもの」と位置づけており、医療機器への対応などを求める声も寄せられているとして、システムに対する要望を毎年収集し、反映する形で機能拡張していきたい考えだ。
企業DXの第一ステップとしてデータ収集自体は製薬企業単独でも可能だが、収集した情報・データを整理した上でどう利活用するかは大きな課題という。そのため、フォーマット変換、表記の統一、データ補正といった同社製品の強みが、収集したデータの活用につながると強調する。
将来的には、先端技術を同社独自で研究開発するR&D本部の言語処理技術を生かし、データ解析を行った上で、副作用の傾向を提示するなど、「新たな価値」の提供も視野に入れる。
育薬の重要性を認識する一方、実行に移せていない企業は少なくないとして、山上氏は「PVリンクを安全性情報のプラットフォームと捉えてもらい、育薬の手段の一つとして検討してもらえれば」と語った。
キヤノンITソリューションズ(PVLinkシリーズ)
https://www.canon-its.co.jp/solution/pharma/