日本製薬団体連合会会長 岡田安史

2025年度中間年改定に当たっては、16年12月の4大臣合意から8年が経過し、内外の環境が大きく変化すると共に、薬価差(平均乖離率)が大きく縮小する中、その廃止を求めてきました。
年の瀬の12月25日に中央社会保険医療協議会は「25年度薬価改定の骨子」を取りまとめました。事実上、9年連続して薬価改定が実施されることに対し、医療関係の現場の抱える課題を深く認識するわれわれとしては、国民への医薬品アクセスを確保し続ける観点から大変遺憾です。
しかし、本決定に至るプロセスとして与党のみならず多くのステークホルダーから中間年改定廃止を訴える声がかつてないほど湧き上がったことは、医療現場で起きている国民にとっての課題を直視しているがゆえであると思います。
25年度薬価改定はこれまでの流れから大きく変容し従来とは一線を画す内容での決着となったことも事実です。平均乖離率5.2%を基準に、新薬創出等加算対象品目、後発品はその1.0倍、新薬創出等加算対象品目以外の新薬は0.75倍、長期収載品は0.5倍、その他医薬品は1.0倍をそれぞれ超える医薬品を改定の対象とすることが決定されました。イノベーションの推進および安定供給確保の必要性といった医薬品産業の眼目に沿って過去最小の5.2%の平均乖離率に象徴される医薬品の流通改善も踏まえ、少なくとも機械的な形での薬価改定とはならなかったことは、薬価政策の未来を見据えた哲学の非常に重要な転換であると考えています。
平均乖離率5.2%が映し出す流通改善は、医薬品卸、保険薬局・医療機関など医薬品流通に携わる全ての方々の血の滲む努力により成し遂げられたものであり、心から敬意を表します。
25年度薬価改定にかかる国会議員や関係省庁との一連の対話を通じ、政官民で医薬品産業政策の課題や課題解決に向けた考え方を共有できたと考えています。
次期薬価制度改革に向けて本年は、これまでにないほど重要な一年となります。市場実勢価格に基づく薬価改定のあり方について、薬価差が生じる要因等の本質的な議論が行われることを期待します。わが国の基幹産業として、医薬品の安定供給を確保すると共に、革新的新薬の創出を通じてグローバルにアンメットメディカルニーズを充足し、疾病の予防・克服、国民の健康寿命の延伸を支え、持続的な日本経済の成長への貢献を実現できるよう、しっかりと議論に参画していきます。