【長崎大など】PARIHN用いた免疫測定法を開発

2025年05月08日 (木)

 長崎大学の岸川直哉教授らは、エジプト・マンスーラ大学との共同研究で、ポリマー化アリザリンレッド-無機ハイブリッドナノアーキテクチャ(PARIHN)を蛍光標識試薬として用いる、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の核蛋白質の迅速で高感度な免疫測定法を開発した。この技術は、従来の免疫測定法である一般的な酵素標識法に代わる非酵素的な蛍光標識法で、感度や安定性、コスト効率が改善される。

 酵素標識抗体を用いるエンザイム免疫測定法は、感度や特異性は高いが、コストや安定性に課題が残されており、迅速診断が求められる臨床現場での即応性に欠ける場面もある。今回の研究では、こうした背景を踏まえて、非酵素型アプローチによる新規検査法の可能性を探究した。

 まず、免疫測定法を用いる新たな非酵素的蛍光標識システムとして、PARIHN技術を開発した。開発したPARIHNは比較的安全でコスト効率が高い素材であるキトサン(天然由来高分子)、アリザリンレッド(色素)および亜鉛イオンから合成される。

 PARIHNの表面には抗体を固定化し、結合させることができるため、特定の病原体や蛋白質を識別するための試薬として利用できる。また、PARIHNはホウ素化合物と結合することで、その構造が変化し、明るく強い蛍光を発するようになる。この性質から、ホウ素化合物を加えることで、PARIHNを介して補足した抗原を高感度に蛍光検出することが可能となる。さらに、一般的な免疫測定法で使われる酵素と異なり、PARIHNは化学的に安定しているため、測定の再現性にも優れている。

 実際に、SARS-CoV-2の核蛋白質を検出する実験で、PARIHNを用いた蛍光免疫測定法では0.76pMという極めて高い感度で検出可能で、従来の酵素を使った吸光免疫測定法より約10倍優れた性能を示した。さらに、市販のCOVID-19用の迅速検査キットにPARIHNを応用した結果、一般的に使われている金コロイドと比較して、微量のSARS-CoV-2の核蛋白質も明瞭に視覚検出できることが確認された。

 今回、PARIHN技術は、免疫測定法やイムノクロマト法において高い感度を示しており、診断技術して大きな可能性が実証された。今後は、この技術を研究開発段階から実用化へと展開するため、製造プロセスのスケールアップやコスト削減を見据えた最適化が重要な課題となっている。

 また、様々な臨床検体を用いたバリデーションを通じて、再現性や信頼性を確保し、国内外の規制基準に対応した体制を整えていくことも不可欠となる。さらに、PARIHNをマイクロ流体デバイスやポイント・オブ・ケア機器と組み合わせることで、より迅速かつ簡便な診断が可能となり、公衆衛生の向上への寄与が期待される。加えて、この技術の応用範囲を広げるため、他の病原体やバイオマーカーの検出への適応可能性を探る研究も進められているという。


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