内閣府は、産学官連携の推進に貢献した優れた成功例に贈る「第7回産学官連携功労者表彰」の受賞者を発表した。医療系分野からは、厚生労働大臣賞として、「ヒト化抗ヒトIL-6受容体抗体(アクテムラ)の製品化:中外製薬・永山治社長ら」、科学技術政策担当大臣賞として「EBウイルスを用いたヒトリンパ球由来抗体の大量作製技術の開発:北海道大学教授兼イーベック会長・高田賢蔵氏ら」、日本学術会議会長賞として「大規模糖鎖解析装置および疾患マーカー探索技術の開発:北海道大学・西村紳一郎教授ら」の3件が選ばれた。
「アクテムラの製品化」は、中外製薬が国産初の抗体医薬品、アクテムラを完成させたもの。アクテムラは、関節リウマチのほか、これまで治療法のなかったキャッスルマン病、全身型小児関節リウマチなどにも適応が可能。大阪大学の岸本忠三教授らのグループによりIL-6の遺伝子が単離され、自己免疫疾患の原因因子であることが示されたことを受け、阪大でIL-6研究と臨床応用が、中外製薬でIL-6受容体抗体の事業化が推進された点が評価された。
「EBウイルスを用いたヒトリンパ球由来抗体の大量作製技術の開発」は、高田氏のEBウイルスに関する研究成果をもとに、イーベックが高品質な医療品向け完全ヒト抗体の開発に成功したもの。マウスを用いた手法に比べ、副作用が少なく、癌やリウマチなどの新薬開発への応用が期待される。
「大規模糖鎖解析装置および疾患マーカー探索技術の開発」は、北大とシステムインスツルメンツが共同で、世界初の糖鎖自動解析装置「SweetBlot」を開発したもの。従来の数百倍の処理速度で、2倍以上の糖鎖検出が可能になった。さらにこの装置を用い、高い精度で健常者と癌患者を区別できる新規糖鎖バイオマーカーを、世界に先駆けて発見した。国内外の製薬、診断薬企業の注目を集めており、診断薬の開発が促進されることが期待される。
なお、今回の受賞事例は合計17件、受賞者は43人だった。表彰式は20日、京都市で開かれる第8回産学官連携推進会議で行われる。