
福田氏

鈴木氏

サイボウズ東京オフィスの一角
サイボウズ株式会社(代表取締役社長:青野慶久)は5月29日、東京都中央区の東京オフィスで、「AI技術を活用し、医療機関の事務作業を効率化~北九州総合病院から学ぶ医療DXの第一歩~」と題したメディアセミナーを開催した。
北九州総合病院の副院長で整形外科医の福田文雄氏と、株式会社日本メディカル情報サポート(NMIS)の鈴木孝充が登壇し、サイボウズのクラウドサービス「kintone(キントーン)」とAIを活用した医療情報プラットフォームの取り組みを紹介した。
高齢化の進展に伴い、大腿骨近位部骨折に関連する医療費は今後増加し、介護費を含めると2040年にピークを迎える見込みとされる。こうした状況を背景に、2022年度診療報酬改定では緊急手術に関する加算や、重症患者への迅速な対応を評価する各種加算が新設された。これにより、診療報酬評価に関連してFFN-J(日本脆弱性骨折ネットワーク)のレジストリ登録への対応が求められるようになっている。
一方、症例登録業務は医師、看護師、リハビリ専門職、薬剤師、医師事務作業補助者(医師クラーク)など多職種にまたがる。北九州総合病院では、不慣れな医師クラークの場合、1症例あたり最大30分を要することもあり、年間約250症例の処理に大きな負担がかかっていた。記載漏れや表記揺れのないデータ蓄積が求められる中、入力負荷が既存業務を圧迫する「データ収集の壁」に直面していた。
福田氏はこうした課題を踏まえ、診断・治療データの収集業務改善を目的とするプロジェクトを主導し、業務改革に着手した。課題解決に向け、2024年後半からNMISと共同で医療データ登録ソリューション「MEDITAL」の開発に着手した。データ入力の負担軽減とデータ品質向上を目標とし、kintoneを基盤とするプラットフォームとして構築した。
中核となるのがAI-OCR(文字認識)技術である。従来は電子カルテの各所に分散する情報を手作業で転記していたが、AI-OCRによりカルテ画像から必要な情報を自動抽出し、kintoneと連携して症例登録に反映できるようにした。福田氏によると、電子カルテは「データベースではなく、自由作文の集合体」であり、構造化されていない情報が症例登録の障壁になっていた。
さらに、大腿骨関連の申請時に用いられるFFN-Jのフォーマットを活用しているのが特徴である。鈴木氏は、AI-OCRで読み取るだけでは「電子カルテ内のどこに必要な情報があるかわからず、結局、画面撮影を医師に依存してしまうことになる」と課題を指摘する。一方、同フォーマットを用いることで、情報の位置特定が不要となり、入力工程の効率化につながった。
その結果、1症例あたり約30分を要していた入力作業は約5分に短縮。業務負担や心理的ストレスの軽減に加え、入力ミスの減少によるデータ品質の向上も実現した。
福田氏は「医療は科学であり、データの収集・分析は不可欠」とした上で、「業務効率化なしには質の高い医療は維持できない」と指摘。医師が診療に専念し、データ入力を多職種で分担する体制の必要性を強調した。
今後は、「MEDITAL」の全国の医療機関への展開を視野に、まずFFN-Jレジストリ登録施設を中心に導入を進める方針。そして整形外科にとどまらず、外科や内科などへの展開も検討し、導入拡大を目指すとしている。
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