ドラッグラグ・ロスの解消に向けた小児用医薬品開発改革が成果を上げ始めている。日本製薬工業協会が4月に加盟企業を対象に実施した調査では、欧米の開発時期に合わせて国内小児開発を検討するプロジェクトが約7割に達した。成人と同一試験で実施するケースを除いた小児単独開発でも、欧米開発に合わせて国際共同治験への参加を検討するプロジェクトは74%と過去最高を記録した。
特に注目されるのは、成人用医薬品の開発段階から小児開発計画の策定を求める「小児開発の努力義務化」が企業行動に変化をもたらし始めたことだ。小児開発プロジェクトのうち「努力義務化が影響した」と回答した割合は、2026年に約22%となり前年から倍増した。承認件数や開発期間短縮といった成果を論じるにはなお時間を要するが、少なくとも開発の早期段階から小児適応を見据える動きが広がりつつある。
小児医薬品の開発促進策をめぐっては、欧州、米国では小児医薬品開発計画の提出が義務化されている一方、日本は成人用医薬品の開発への影響を考慮し、努力義務という形を選択した。有識者からは「海外と同様に義務化すべき」との指摘もあったが、現時点では企業の開発姿勢を前向きな方向へ導いたという点で評価に値する。
9月のレギュラトリーサイエンス学会学術大会では、義務化した場合に医薬品医療機器総合機構(PMDA)への相談件数が急増し、当局側の対応能力が逼迫する可能性から、「企業の開発促進と当局の審査・相談体制の維持を両立させる観点から努力義務化は絶妙な制度設計だ」との意見が上がった。
もっとも、成果は努力義務化だけによるものではない。PMDAの小児・希少疾病用医薬品等薬事相談センター設置をはじめ、日本人小児患者が国際共同治験に参加しやすくなるよう制度を見直したことも追い風となった。さらに薬価制度では、小児加算の拡充、新薬創出等加算の要件見直し、小児向け用法・用量設定が必要な医薬品の再審査期間を最長12年まで延長するなど、多面的なインセンティブが整備されてきた。
ただし、小児用医薬品の開発は成人用医薬品の開発戦略と切り離して考えることはできない。製薬企業が日本を重要な開発国として位置づけるためには、市場としての魅力を維持・向上させることが前提となる。中間年薬価改定や再算定、費用対効果評価制度への対応に加え、米国の最恵国待遇(MFN)価格政策の影響も無視できない。
小児医薬品開発をめぐる改革は確かな成果を示し始めたが、その流れを一時的なものに終わらせないためには、日本で研究開発を行う意義を企業が見出せる環境を整えることが欠かせない。必要な薬を患者に迅速に届けるため、制度改革の効果検証と市場競争力の強化を両輪で進めるべきである。






















