今年は新たな社会構造に見合う医療分野の体制構築に向けた節目の年となった。
まず、薬剤師職能に関しては9月に、「健康情報拠点薬局のあり方に関する検討会」が、かかりつけ薬剤師が地域住民の予防・健康づくりを行う薬局の名称を「健康サポート薬局」と決定した。
さらに健康サポート薬局になるための要件も公表され、地域住民による主体的な健康の維持・増進の支援体制が明確化された。
10月には厚労省が、地域包括ケア時代を見据えた「患者のための薬局ビジョン」を発表し、薬局をかかりつけ薬局に再編する道筋が示された。同ビジョンには、「患者の服薬情報を一元的・継続的に把握した薬学的管理・指導」など、保険薬局が「かかりつけ薬局」となるための諸要件が盛り込まれている。
これらの出来事は、地域包括ケアにおけるかかりつけ薬局への「期待の大きさ」を物語っているのは言うまでもない。それに応えるには、▽残薬の整理も含めた在宅での薬剤管理▽未病の人へのOTC薬・サプリメントなどの販売や健康増進への貢献▽早期段階における認知症の受診勧奨▽うつ病のゲートキーパー――などを新たな職能として確立する必要があるだろう。
これまで門前で見られがちな調剤機能のみではなく、社会の変化に応じて柔軟に対応できる薬剤師職能の確立こそが、これから薬局が生き残るための大きなポイントになる。
一方、製薬業界の関連では、4月にアベノミクス第3の矢の目玉の一つである「日本医療研究開発機構」(AMED)が本格的にスタートした。AMEDでは、厚生労働省、経済産業省、文部科学省からの一元化予算を活用し、医薬品や再生医療の研究、癌や認知症の分野で、基礎から実用化まで一貫した推進を展開している。
今後、AMEDが狙う創薬や医療機器開発における司令塔機能が注目されるところだ。
6月に閣議決定された骨太方針2015では、「成長戦略におけるイノベーションの推進、真に有効な新薬の適正な評価等を通じた医薬品産業の国際競争力強化に向けた必要な措置の検討」を施策として導入。医薬品産業におけるイノベーションの推進が経済成長につながることが改めて強調された。
9月には、厚労省がまとめた「医薬品産業強化総合戦略」が発表され、医薬品の安定供給、医療費の効率化、産業としての競争力強化を同時・一体的に推進する方針が示された。
これらの施策は、いずれも医薬品産業を真に経済成長の柱とするもので、その着実な遂行が注目される。新薬開発から新しい薬剤師職能の確立に至るまで、今年を“新たな社会構造に見合った節目の年”として振り返ることができるよう関係者には努力してほしい。