日本製薬団体連合会会長 岡田安史

昨年は、医薬品産業の大転換へとつながる改革が打ち出された1年となりました。歴史を振り返ると、革新的新薬の創出と未承認・適応外薬問題の解消を目指し、2010年に新薬創出等加算が試行的導入されると共に後発品の本格的な使用促進が進められました。
しかし、保険財政の逼迫から16年の特例市場拡大再算定、18年の薬価制度抜本改革、21年の中間年改定など、様々な薬価引き下げ策が講じられました。
結果として日本の医薬品市場は魅力度を失い、ドラッグラグ・ロスが顕在化しています。また、急激な後発品使用促進策は多くの企業の参入を促し少量多品目生産の産業構造を作り出すと共に、過当競争が繰り広げられることとなりました。
そうした中で、後発品企業のGMP違反に端を発した供給不安がその産業構造も相まって長期化しています。
こういった医薬品産業を取り巻く様々な課題の解決に向けて、厚生労働省に「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が設置され、昨年6月に報告書が取りまとめられました。
安定供給の確保、創薬力強化、ドラッグラグ・ロスの解消、適切な医薬品流通の実現、過度な薬価差の偏在の是正など、かつてない重要な議論がなされ、対策の大きな方向性が示されました。そういった流れの中で年末に取りまとめられた24年度薬価制度改革の骨子には、迅速導入加算の新設等、イノベーションの評価を促進する多岐にわたる改革が盛り込まれました。
安定供給の確保の観点からは、24年度薬価制度改革骨子で基礎的医薬品の収載からの経過期間の要件見直しや不採算品再算定の柔軟かつ確実な適用などの対策が講じられることとなりました。
また、後発品については安定供給の確保が可能な企業を可視化できる企業指標が導入され、一部薬価上の評価にも用いられることとなりました。今回の制度改革は安定供給にかかる問題の抜本的解決に向けて大きな一歩を踏み出したものと認識しております。
現在、政府で日本の創薬力強化に向けた司令塔機能や国家戦略に関する議論が進められており、薬価制度については類似薬がない革新的新薬の適切なイノベーションの評価のあり方、過度な薬価差の偏在の解消に向けた流通など解決すべき課題が残されています。
医薬品業界としては、これらの課題に真摯に向き合い、引き続き関係者と議論を尽くしていきます。