第57回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会理事
小林百代
埼玉県薬剤師会理事
関口直邦
「女性の健康週間」というのがあるのをご存じだろうか。厚生労働省では毎年3月1日から8日を女性の健康週間と定め、女性が生涯を通じて健康で明るく充実した日々を過ごすことを目的とした様々な取り組みが行われている。多くの自治体においても女性の健康増進のための取り組みがされている。
女性は女性ホルモンによって健康を左右され、そのホルモン動態が一生のうちに大きく変化することが身体面のみならず心理面にも影響することが知られている。妊娠・出産といった人生の大きなイベントも乗り越える。加えて女性の社会進出が進み、経済産業省は今年2月に女性特有の健康課題による社会全体の経済損失の試算結果について公表し、その額は年額で3.4兆円とされた。女性の健康課題に向き合い対策を講じることは、女性の健康寿命を延ばすことはもちろん、日本経済にも好影響を及ぼす可能性がある。
さて、この分科会では女性の健康課題について、HPVワクチンと緊急避妊薬にテーマを絞って学ぶが、HPV感染症も妊娠もパートナーがあってのこと。これらを理解するための基礎となる性教育の必要性について、埼玉医科大学の高橋幸子先生に基調講演をお願いした。
HPVワクチンは子宮頸癌を始めとするHPVが原因で起こる疾患の予防に効果的である一方で、接種後の副反応の懸念から接種の積極的推奨が中断された経緯がある。その後の調査研究より再評価され、現在では接種勧奨が再開されている。
緊急避妊薬は現在日本においては処方箋医薬品となっており、医療機関を受診することが必須である。しかしこの薬剤は、避妊せずあるいは避妊の手段が適切でなかった性交から72時間以内に服用する必要があり、その時間的制約の中アクセス向上等の観点からOTC化が望まれ、一部の薬局においてOTC化に向けた環境整備のためのモデル的調査が今まさに行われている。
HPVワクチンはHPVウイルスが引き起こす種々の疾患から、緊急避妊薬は意図しない妊娠から、女性が自身を守るために活用されるものである。われわれ薬剤師には、対象者の不安に耳を傾け、対象者が自分の意志で選択できるよう情報提供することが求められると考える。そのためには薬剤情報に限らず性感染症対策や避妊についても知識を持つ必要があり、本分科会をその一助としていただきたい。
(小林百代)