
野木森社長
アステラス製薬の野木森雅郁社長は6日、都内で開いた中間決算説明会で、大型化が見込まれる過活動膀胱治療薬「YM178」(一般名ミラベグロン)について、2010年度に日米欧で承認申請を行う方針を明らかにした。米国、欧州で実施中の第III相試験結果が判明し、主要評価項目が達成されたことを受け、来年度中に申請可能と判断した。野木森氏は「ミラベグロンは、今後の成長を支える大型製品」と位置づけ、申請データパッケージの準備に全力を挙げる考えを示した。
「YM178」は、過活動膀胱(OAB)に伴う頻尿・尿意切迫感・尿失禁を適応症とするβ3受容体作動薬。泌尿器科領域を牽引するOAB治療薬「ベシケア」の後継品として、グローバル開発が進められてきたが、このほど米国、欧州で実施された第III相試験の結果が判明。OAB患者で24時間の排尿回数・尿失禁回数の変化量を解析したところ、プラセボ群に対するミラベグロン群の有効性が裏付けられ、主要評価項目を達成したことが明らかになった。また、ミラベグロン群の安全性、忍容性についても、抗コリン剤に特徴的な副作用の口渇、便秘の発生率は、プラセボ群と同等で低い結果が得られている。
この結果を受け、野木森氏は「申請スケジュールの確度がさらに上がった」として、10年度後半に米国、欧州で「YM178」の申請を行う方針を明らかにした。さらに第III相試験中の日本でも、10年度前半に申請できる見通しを示した。
重点領域と位置づける泌尿器科領域では、グローバル製品の「ベシケア」が二桁成長を続けている中、野木森氏は「自社開発品のミラベグロンは大型化が期待できる製品。来年度の申請にメドがついたことで、中長期的な成長に大きな弾みとなる」と強調した。
同社は、来年5月に10年度~14年度中期経営計画の公表を予定しているが、「YM178」を筆頭に、抗Xa阻害剤「YM150」、SGLT2阻害剤「ASP1941」と自社開発品が第III相試験に進んできている。野木森氏は「着実にパイプラインが育ってきており、今後のプロジェクトの進展に確信を持てるようになってきた。これらパイプラインが貢献する姿を、次期中期経営計画で描けるのではないか」との見通しを示した。