4月1日から実施される薬価制度改革を受け、日本製薬団体連合会の竹中登一会長(アステラス製薬代表取締役会長)は、本紙のインタビューに応じ、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の新設を、「医療全体のことを考えて、加盟団体が一致団結してくれた」と評価。長期収載品の2・2%追加引き下げについても、「医療全体のバランスを取る意味において、やむを得なかった」とした。また、加算対象品目をめぐっては、「各社の製品ポートフォリオの特性が表れている。新薬価制度の精神が反映された結果」との見方を示した。その上で、2012年度改定時の本格導入に向け、「まず2年間で一番やるべきことは未承認薬対応」と課題を挙げた。
10年度薬価改定では、業界が強く要望していた特許期間中の薬価を引き下げない仕組みとして、新薬創出加算の試行的導入が決まった。竹中氏は「業界として初めて提案した薬価制度改革案が、試行的ではあるものの、導入されることは画期的だ」と評価したが、最終的に新薬創出加算の加算率は0・8倍、長期収載品は2・2%の追加引き下げで決着を見たことについては、「個々の会社に与えるインパクトは非常に大きいが、医療費全体のバランスを取るという意味では、残念ながら、やむを得なかった」との認識を示した。
また、今回624品目が加算対象となったが、竹中氏は「各社の製品ポートフォリオ特性を反映した結果であり、新薬価制度の精神が明らかに表れたということだろう」との見方を示し、「決して外資系が多いとか、内資系が少ないということではない」と強調した。
これに対し、安定供給の面から薬価維持を求めてきた必須医薬品に関しては、加算対象外となった。竹中氏は「非常に大事な問題として、われわれも強く求めてきたが、結果的に加算が得られなかったことは不満であり、深く反省している」と陳謝。「必須医薬品が供給できない価格になれば、医療に大きな影響を与えてしまう。次回改定時には、少なくとも薬価が引き下げられないよう強く要望したい」との考えを示した。
その上で、12年度の本格導入に向けた最大の課題をドラッグラグの解消と位置づけ、「2年前倒しで試行導入され、われわれは加算というインセンティブをもらった。まず確実に未承認薬・適応外薬問題を解消していかなければならない」と強い決意を語った。同時に、今後求められる新薬の創出効果については、「開発には長い時間がかかるわけで、2年間で成果が出るわけではない」とした上で、「開発パイプラインがどう変化するか進捗状況を見てほしい」との指標を提案した。
さらに流通改善への対応としては、「販売、流通に関してクリーンな姿を見せていくことが重要。まずは共通の研修を受けた各社のMRが医療関係者に対し、積極的に説明していく草の根運動からだと思う」との考えを示した。
一方で、今回の薬価制度改革が「国内製薬企業の経営者がビジネスモデルを変化させるターニングポイントになる」と予測。「アンメットニーズとグローバルという二つのキーワードが一つの方向性になると思う。創薬指向型の企業はアンメットニーズに大きくシフトし、それに対応できない企業は後発品に移行するかもしれない」とし、さらなる業界再編の引き金になると見通した。