
握手する中山社長(左)と柴理事長
第一三共の中山譲治社長兼CEOは都内で記者会見し、来年4月に設立予定の北里研究所との合弁会社「北里第一三共ワクチン」について、「第一三共と北里の長きにわたる提携関係をさらに進めることで、ワクチン事業を強化・発展できる」と強調。その上で、「今後は自社内の一つのパッケージで、完結した形でワクチン事業を主導し、日本のワクチンを充実させたい」と述べ、国内でのワクチン供給体制の確立を目指すとした。
両社は、1960年12月に提携し、旧第一製薬(現:第一三共)が61年4月から、北里研究所の不活化ポリオワチン「ソーク・ワクチン」の販売を開始。2008年12月には、研究、開発、製造、販売における相互補完提携を締結し、現在、第一三共がインフルエンザ、3種混合など北里研が開発したワクチン7品目12製品を販売している。
今回、ワクチン事業を発展させるため、提携関係をさらに強化し、来年4月に合弁会社を設立することになった。新会社では、北里研内でワクチンの研究・開発・製造を手がけてきた「生物製剤研究所」(生剤研)を引継ぎ、ワクチン事業を進めていく。
中山氏は、「ワクチン事業で競争力を確保するためには、ワクチンで十分な体制を持っていないといけない」とし、新会社を次世代ワクチンを製造するための中核機能として位置づけ、「北里研と一緒に、国内で新しいマーケットを生み出していく」と意欲を語った。
一方、北里研の柴忠義理事長は、「生剤研の収益だけでは大きな投資ができなかったが、計画的な投資が行える」とした上で、「ワクチン・感染症などの基礎的研究からワクチンを生産する道筋ができた」と新会社への期待を語った。
第一三共は、今年度からスタートした第二期中期経営計画で、「イノーベティブ医薬品」「エスタブリッシュト医薬品」「OTC」「ワクチン」の4事業を柱に位置づけているが、合弁会社の設立によって、ワクチン事業の強化を目指す。ワクチンの製造に必要な中核機能を獲得し、これまでの外部機能依存型から、自社主導型のビシネスに転換を図る考え。
今後、11月に予定する確定契約書の締結までに両社で協議を行い、北里第一三共ワクチンの具体的な事業計画を決定する。中山氏は、「基本的には予防ワクチンで、インフルエンザに限らず広い範囲でワクチンを生産していきたい」と方向性を語った。