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新販売体制、業界の認識統一を

2011年01月21日 (金)

 今年、参加した新年互例会のうち、OTC薬に関連した団体や企業の関係者のあいさつなどに含まれる共通認識は「改正薬事法施行後もOTC薬市場は依然、活性化していない」というものだった。医薬品の新販売制度が始まって以降、業界をあげて粛々と法に則った適正対応をとってはいるが、思った以上に振るわないという窮状を訴えているようにもとれた。

 民間調査会社インテージによると、現状のOTC薬市場は、小売店販売ベースで約1兆1000億円の市場を形成しているという。一方で、改正薬事法施行以降のOTC薬市場の販売金額の推移では、昨年は対前年を上回ったのは7月のみ。それも記録的な猛暑という気候に影響され、ドリンク剤などの売上高が伸長したという一過性のものだ。

 また、スイッチOTC薬として期待された第1類薬の販売金額も昨年6月、7月、10月で前年比プラスの実績となっているが、OTC薬全体の販売構成比では4%ほどに過ぎず、毛髪用剤など伸長する一部薬効を除けば、下げ止まっているというのが現状と分析しているようだ。

 ある業界関係者は、「OTC薬は、医薬品という性格上、売り場の拡大や低額販売が、必ずしも消費拡大につながらない」と指摘しながらも、「OTC薬業界の製・配・販の取り組みが、消費者の購入を促進するパワーに欠けていたのでは」と、これまでを振り返る。そのパワーとはやはり、セルフメディケーション推進に向けた啓発活動なのかもしれない。

 改正薬事法では、医薬品販売者側に新制度が設定された。それとは裏腹に、一般生活者のセルフメディケーションに対する意識は、改正法施行後もそれほど高くはないのかもしれない。昨年、日本OTC医薬品協会とインテージが共同で行った生活者意識調査では、『セルフメディケーション』という言葉そのもの認知は17・6%と低い結果が出ている。

 セルフメディケーションには、文字通り自分自身で健康管理を行うイメージはあっても、具体的に、疾病の予防や軽い疾病治療に際し、薬剤師や登録販売者からアドバイスを受けて、医薬品を購入するというイメージはまだ定着していない。

 やはり販売者サイドも、気軽に相談できるパートナーとしての存在をアピールする必要性はあるのだろう。そこには、人と人とのコミュニケーションが重要で、改正法が対面販売の原則を謳っている所以だとも考える。

 昨年度の厚労省が実施した覆面調査では、個店の薬局・薬店で、第1類薬に対する対面販売がなおざりにされていた実態も浮かび上がった。今年度も同様の調査が実施される。「覆面調査」という見えないプレッシャーがあるから、販売姿勢の襟を正すというのでは本末転倒だ。医薬品販売者一人ひとりが、生活者のセルフメディケーションの良きアドバイザーとして、信頼を得られるような取り組みが必要になるだろう。

 また、今年5月末には、原則禁止されている第2類薬の通信販売について、医薬品販売店のない離島居住者や、既存の利用者に限って可能だった経過措置も終了する。医薬品ネット販売論議が再燃することは必至だ。そういう時期だけに、医薬品販売のあり方について、薬業界全体が認識を統一させることが早急に求められよう。



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