ツムラは、中国医薬保健品股{イ+分}有限公司と北京医薬大学との共同研究で、「甘草」の栽培技術を確立したと発表した。2001年から共同研究を進めていたもので、様々な栽培条件を設定して、日本薬局方規格のグリチルリチン酸含量2・5%以上に取り組んだ結果、中国北西部の圃場において、わずか1年3カ月の生育期間で、グリチルリチン含有量が平均3・5%以上の甘草の大規模栽培に成功した。野生品に比べ、短期間で高品質の甘草を収穫できる栽培技術で、今年2月に中国で特許出願を行った。野生品の在庫が切れる13年以降は、栽培品への切り換えを段階的に進める予定で、甘草を使った医療用漢方製剤の安定供給を目指す。
甘草は、漢方製剤の約7割で使用され、中国から完全輸入している。ただ、中国では、甘草の乱獲による砂漠化が問題となり、採取制限が行われているほか、欧米での需要の高まりを背景に、世界的に需給が逼迫している。
ツムラでは、漢方製剤129処方のうち、94処方で甘草を使用していることから、安定供給を目指し、01年から中国医保公司と北京中医薬大学との共同で、甘草の栽培化研究をスタートさせた。
共同研究では、基礎研究として、日本薬局方基準で定められたグリチルリチン含有量2・5%以上の甘草を栽培するため、生育に適した条件を探索。その結果、▽少ない降水地域▽豊富な地下水▽粘土質の土壌▽直播栽培▽初夏に収穫▽地上部の切除‐‐の栽培条件を組み合わせることで、グリチルリチンを高含量化できると推定した。
基礎研究の結果を受け3者は、09年4月から中国北西部にある圃場40haで、甘草の大規模栽培を開始。10年7月に6haで収穫を行った。これまで、野生甘草がグリチルリチンなどを十分に含んだ根に育つには、3~4年必要とされているが、わずか1年3カ月で、日本薬局方基準を上回るグリチルリチン含有量平均3・5%以上の甘草を収穫することに成功した。
今回栽培した甘草は、短期間の栽培でありながら、日本薬局方規格の全てに適合しており、漢方製剤の品質を評価する「3D‐HPLC」による野生甘草との比較でも、成分組成に差がないことが確かめられている。
さらに、新たに大型農機を導入することで、栽培の効率化を実現。6haで5・5トンまで生産性を高めた。
久島正史専務取締役は、都内で開いた記者会見で、「野生甘草を栽培化することに、一定のメドをつけることができた」と評価。今後、栽培面積を100haまで拡大する予定で、野生甘草の在庫がなくなる13年以降は、順次栽培品への切り換えを進めたいとしている。一方、日本国内での栽培化や、甘草以外の野生生薬の栽培化についても、今後検討していく方針だ。