
グート社長
バイエル薬品社長のセバスチャン・グート氏は、本紙の取材に応じ、日本での大型品の上市に向け、組織の拡充や、社員への理念の浸透に取り組んでいることを明らかにした。アンメットメディカルニーズを満たす豊富なパイプラインを持ち、今後日本でも、次々に承認申請や上市を見込んでいる。グート氏は「大いなる成長のチャンスがきている。強い組織で、正しい文化をもって、それを掴みたい」と語った。
同社期待の大型品として、3月に国内で製造販売承認を申請した経口抗凝固薬「リバロキサバン」(海外商品名:ザレルト)、6月に申請した滲出型加齢黄斑変性症治療薬「VEGFトラップ・アイ」(一般名:アフリベルセプト)の上市が近い将来に控えている。いずれも、アンメットメディカルニーズに焦点を当てた革新性の高い医薬品だ。
「開発中のパイプライン、販売中の製品ともに、有望なものがたくさんある。これらの製品群をもってすれば、これから2~3年で売上高2000億円(薬価ベース)を達成できると思う」とグート氏。「成長の実現には製品、組織、文化という3要素が必要で、良い製品だけでは十分ではない。組織強化と文化の醸成に取り組んでいる」と話した。
その一つがMRの増員。今春は106人を新たに採用した。このうち105人がMR候補者。MR数は新入社員を含めると、5月末時点で約1500人となった。来春も同数以上の社員を、新たに採用する計画だ。
さらに、「メディカル・サイエンティフィック・リエゾン」という部署を、2月に学術部門内に新設した。スタッフ数は現在19人。販売中の製品だけでなく、臨床開発中の製品についても、医師と対等に同じ目線で最先端の情報を話せる部署と位置づけ、深い専門知識を持った人材を揃える。「医師は、アンメットメディカルニーズを満たす製品には、開発段階から興味を持ち、話をしたいはず。それに対応するのが役割」という。
このほか、ファーマコビジランス部門にも「スポットライトを当て、その重要性を強調したい」とグート氏。「上市後、有害事象が少しでも増える傾向が見られた場合、それをきちんと管理できる体制を万全にすることが不可欠」と話す。
一方、社内文化の醸成に向けて、今年から「LIFE」プロジェクトを開始した。リーダーシップ、誠実さ、柔軟性、効率性の英語の頭文字を連ねたもの。これらの理念を各社員に浸透させ、日常業務に反映させるのが目的。携帯可能な印刷物を社員に配布したほか、マネージャーが部下を集めて議論するワークショップを、長期的に何度も開く計画だ。