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【2015年回顧と展望】「門前」から「かかりつけ」「地域」への流れ定着を‐日薬副会長

2015年12月28日 (月)

日本薬剤師会副会長 石井甲一

石井甲一氏

 2015年は、薬剤師会にとって大きな嵐の真っ只中を歩いているような1年だったと思います。しかし一方で、イベルメクチンの開発で大村智氏がノーベル生理学・医学賞受賞という、うれしいニュースもありました。

調剤報酬の不適正請求

 2月、大手薬局チェーンの子会社が薬剤服用歴未記載のまま調剤報酬を請求していたとの新聞報道があり、当該企業もその事実を認めたため、厚生労働省より、全保険薬局を対象とした自主点検が指示されました。

 このような行為は、保険調剤のみならず、薬剤師そのものの信頼性を貶めるものであることから、3月に本会から都道府県薬剤師会に対し、研修会の実施を依頼すると共に、6月には本会の医薬分業対策委員会が作成した研修会用資料を都道府県薬剤師会に提供しました。

規制改革会議からの指摘

 2月、規制改革会議が「医薬分業における規制の見直し」をテーマとして取り上げ、3月に厚生労働省、日本医師会、健康保険組合連合会、有識者と共に、本会からは森副会長が参加した公開ディスカッションが行われました。

 ディスカッションの場では、本会が、かかりつけ薬局・薬剤師による面分業を目指してきていることを強調する一方、薬剤師による疑義照会、後発医薬品の使用促進、残薬支援等による医療保険財政や医療安全への貢献についてデータを示して訴えると共に、本会および都道府県薬剤師会にお願いし、構造規制の緩和に反対する決議を行い、日本薬剤師連盟の協力を得ながら、規制緩和に対する反対活動を展開しました。また、有村規制改革担当大臣、塩崎厚生労働大臣に対しては、決議文を添えた要望書を提出しました。

 その効果もあり、6月30日に閣議決定された規制改革実施計画では、医療機関の敷地内あるいは施設内への保険薬局を認めるとの結論には至らず、具体的な検討の場は厚生労働省に移ったと捉えています。

無資格調剤

 5月には薬局において無資格者に飲み薬の調整、軟膏剤の混合等を行わせていたとの報道がなされました。その後、厚労省より事実の確認と、このような行為が再発しないよう適切な指導を要請する都道府県衛生主管部(局)長宛の通知が発出されました。薬剤師の役割は処方箋の受け取りから始まり、服薬指導、さらには患者さんの服薬状況のフォローまで幅広いものであり、このような事例の発生は、薬剤師業務への信頼性を失うばかりか、薬剤師の存在そのものにも及ぶことになると捉えなければなりません。

健康サポート薬局と患者のための薬局ビジョンからの指摘

 9月、厚労省の「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」が、「健康サポート薬局のあり方について」との報告書をまとめました。健康サポート薬局は、これまで本会が目指してきた「かかりつけ薬局」機能を有しつつ、加えて、要指導医薬品等の供給等と共に地域住民に対する健康相談・健康サポート機能を備えた薬局であるとされました。今後、具体的な基準が作成され、基準を満たす薬局を行政が公表する制度が来年度からスタートすることになります。

 また、10月には「患者のための薬局ビジョン」が厚労省から示されました。同ビジョンには「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へとの副題がつけられており、25年までに全ての薬局が「かかりつけ薬局」になることを目指すべきであるとしています。行政から大きな応援をいただいたと捉えており、その期待に全国の薬局・薬剤師が応えていかなければなりません。

診療報酬・調剤報酬の改定

 来年4月は2年に一度の診療報酬・調剤報酬の改定が行われます。改定に向けて中央社会保険医療協議会が議論を続けてきましたが、一方で財政制度等審議会において、調剤報酬を標的にし、極めて厳しい対応を迫る議論が巻き起こりました。10月の会議に提出された資料には「現行の調剤報酬については、診療報酬本体とは別に、ゼロベースでの抜本的かつ構造的な見直しが必要」とする方向性が示されました。

 本会では、日本薬剤師連盟と連携しながら、医科1:調剤0.3を堅持した公平な改定となるよう陳情活動を展開してきましたが、加えて、調剤報酬のみを対象とした特例的改定を阻止することを訴えることにしました。今月4日の中医協における調剤報酬の検討では、「かかりつけ薬剤師・薬局の評価」「対人業務の評価の充実」「いわゆる門前薬局の評価の見直し」の3点が資料として示され、議論が行われました。

 その結果、今月21日、次期診療報酬改定は0.49%の引き上げ、医科0.56%、調剤0.17%と1:0.3を堅持することができました。しかし、一方で薬価の引き下げが行われ、また、いわゆる大型門前薬局等に対する評価の適正化という制度改革が行われることになり、必ずしも満足できるものではないと捉えています。

今後の展望

 患者のための薬局ビジョンに示されている、「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へという流れを着実に実行に移していかなければならず、全ての薬局が、地域住民にとって身近な「かかりつけ薬局」に移行できるよう、本会としても努力していく必要があると考えます。



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