日本製薬団体連合会会長 森田 清
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近年の生命科学の進展は、昨年話題になったiPS細胞の研究など目を見張るものがあり、医薬品産業への期待も年々高まるばかりです。
医薬品産業には、「医療における役割」と「産業としての役割」の二つが期待されていますが、前者では、革新的新薬創出による病気の克服や医薬品の安定供給を通じた国民の健康増進への貢献、後者においては、省資源知識集約型産業として、日本経済発展のリーディング産業の一翼を担うことが期待されています。現に昨年は、国を挙げてイノベーション促進とドラッグ・ラグ解消に向けての検討と具体策の展開が始まるなど、医薬品産業にとっては、新たな飛躍に向け、第一歩を踏み出した画期的な1年でありました。
本年は、動き出した歯車の回転を軌道に乗せる重要な年となります。ジェット機も離陸する際に最大のエネルギーを必要とするように、この102年は医薬品産業が飛翔するための重要な時期であります。
産業施策の3本柱である、政府研究開発予算、研究開発促進税制、薬価制度改革については、昨年一定の前進が見られたものの、まだまだ十分とはいえません。
政府研究開発予算は大幅増となりましたが、国際競争力強化の視点からは、米国と10倍ある格差を縮小することが緊要であります。
研究開発促進税制においては、努力の甲斐あって2008年度の与党税制改正大綱に拡充策が盛り込まれましたが、長期にわたり多額のリスクマネー投資を必要とする研究開発を支えるためには、さらなる拡充を図り実効性を高める必要があると考えます。
薬価制度改革については、国民に必要とされる医薬品が、迅速かつ安定的に供給され得る制度の構築を目指さなければなりません。新薬の価値に見合った薬価算定、本来あってはならない既収載品改定ルールの廃止など、われわれが提案している新たな薬価制度の実現が必要です。
個々の企業としても、産業構造の大変革のうねりを踏まえて、自らのプレゼンスを示す領域を今日的に再確認するなど、経営戦略の再構築が必要となるでしょう。新薬、基礎的医薬品、後発医薬品と大きく三つに分類される医薬品のどこで事業を行っていくのか、疾患領域を再整理するのか、あるいは機能特化型として研究開発、生産等に注力していくのかなど、10年後、20年後の自らの姿を描き、その実現に向けたプランを構築することが重要になると思われます。
国全体としても、新薬、後発医薬品を両輪として施策を集中していく方向に舵をきりました。新薬の研究開発は国際競争の観点からその難易度を高めていますし、後発品分野でも海外も含めた競争激化と信頼性向上に向けた投資など、経営環境は厳しくなる中、企業にも一層の経営努力が求められています。
日本製薬団体連合会としては、国民医療の充実と医薬品産業の発展に向け、傘下の団体の意見を集約して、関係者に対して積極的な提言を引き続き行っていく所存です。医薬品産業、そして当連合会に対しての一層のご理解とご支援を宜しくお願い申し上げます。
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