医療機関における最近の薬剤師の活動を見ると、医師に対して薬剤選択や投与量、投与期間の変更など、薬物療法での処方提案を活発に行っている報告が増えてきた。注目すべきは、薬剤師が提案した処方提案の採択率が高いこと。施設によっては8割から9割というところも多い。2010年4月に厚生労働省が発出した「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」、いわゆる医政局長通知に示された積極的な処方提案を行い、その多くが医師に採用されているとの現場からの報告は、チームの一員として薬剤師が医師など他のスタッフと協働し、医療を支えていることを裏づけていると言えるだろう。
医政局長通知を振り返ると、チーム医療において薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に有益とされ、具体的には、薬剤選択や投与量、投与方法、投与期間等について医師に積極的に処方提案すること、血中濃度や副作用モニタリング等に基づき必要に応じ医師に薬剤変更等を提案すること、薬物療法の経過等を確認した上で医師に前回の処方内容と同じ処方を提案することなど、処方提案に関する業務がいくつも明記され、繰り返し薬物療法に主体的に参画するよう強い期待感が示されていた。
今月の臨床腫瘍薬学会学術大会でも、癌化学療法を行っている患者の状態に応じて抗癌剤の選択や休薬、中止、変更、投与量や投与期間の変更など、様々な処方提案の取り組みが報告された。大学病院や腫瘍内科医が勤務しているような病院が中心だが、逆に専門性が高い分、医療スタッフの役割分担が明確化され、よりチーム医療が機能している印象を受けた。薬の専門家である薬剤師が処方提案を行うことは、主体的に薬物療法に参加することを意味する。また、処方提案のほとんどを医師が採択しているという状況は、信頼の裏返しであり、ますます薬剤師の役割と責任が大きくなっていることの表れでもある。
このように、薬剤師による処方提案が浸透し、チーム医療の推進に貢献する成果を上げつつある。これを全国的な取り組みに広げてまとめ、薬剤師業務のエビデンスとして訴えていく必要がある。そして、さらに重要なのはこれを地域に広げて、薬局薬剤師による処方提案から処方変更に至った事例を増やし、地域におけるチーム医療を推進していくことだろう。「患者のための薬局ビジョン」でも、対人業務の一つに処方提案が位置づけられ、医師の処方内容をチェックし、処方医に処方提案を実施する機能が求められている。
まだ地域では医師との関係などから処方提案がスムーズに進んでいないのも事実だが、地域包括ケア時代に向けて現場での実践は待ったなしの状況にある。そこを突破するカギは、薬の専門家という原点ではないだろうか。