「禁煙法」の導入が世界的に広がっている。英国では2004年のアイルランド、06年のスコットランドをはじめ、昨年7月1日からはイングランドでもバーやレストラン、オフィスを含めた屋内の公共的な場所での喫煙を禁止する禁煙法が施行された。その効果について、英国の国民保険サービス(NHS)のストップ・スモーキング・サービスが調査した結果、施行前年に比べ、禁煙成功者が約28%増加していたことが分かった。
調査は、07年4月09月の6カ月間に、NHSストップ・スモーキング・サービスを利用した32万7800人を対象に行われた。その結果、利用者の約半数に当たる16万5000人が禁煙に成功した。「禁煙法」施行前の06年の同期間と比べて、禁煙成功者は28%上回る成績だった。
既に「禁煙法」が施行されているスコットランドでの調査でも、禁煙成功率が高まっている結果が報告されており、「禁煙法」とそれを支える禁煙プログラムが、禁煙成功という成果に結びついたといえそうだ。
この結果に対して、英国の保健相であるドーン・プリマロロ氏は、「これほど多くの国民が禁煙に成功したのは素晴らしい成果だ。現在の英国人成人の喫煙率は24%から22%に減少した。このままいくと、英国の喫煙率を2010年までに21%へ減少させるという目標も達成できるだろう」とのコメントを出している。
英国ではこれまで、いくつかの禁煙対策を打ち出してきた。中でも、00年には禁煙への教育とアドバイスを提供する「ストップ・スモーキング・サービス」を設立。01年からは、いわゆる地域医療を担う医師による、カウンセリングをはじめとした禁煙治療を手軽に受けられるようなシステムをつくり、ニコチン代替療法が必要な患者に対しては、ニコチンパッチやニコチンガムを地域医療機関で処方する禁煙プログラムを普及させている。
そうした英国での実情を踏まえて、大和浩氏(産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学教授)は、「英国では喫煙の有害性を啓発するドラマ仕立てのテレビCMが流れ、地下鉄のホームにも禁煙を促す大きなポスターが貼ってあるなど、反タバコの啓発活動は日本よりも数段進んでいる。また、タバコ1箱が1200円もする上に、禁煙治療は医療保険でカバーされているため無料である。このように禁煙しやすい社会環境が整っている英国の喫煙者は、ニコチン依存性が強くタバコをやめにくい人たちが残る傾向にある。今回の英国の禁煙法はそのような喫煙者を大量に禁煙させたわけである」と指摘。「わが国でも、あらゆる屋内を全面禁煙とすることを義務とした上で、違反者にも管理者にも罰金を科すような厳格な制度が必要」だとコメントしている。
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