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流通改善ガイドラインを受けて各セクターはどう行動したか?

2018年11月06日 (火)

〔(5)頻繁な価格交渉についての考察〕

 流通改善ガイドラインでは、「頻繁な価格交渉の改善」の項で、「未妥結減算制度の趣旨を踏まえ、交渉回数を増やさず安定供給などの本来業務に注力できる年間契約等のより長期の契約を基本とすることが望ましい」と記載されている。

 今後、毎年の薬価改定(部分・全面?)の導入が検討される中で、薬価調査後の再妥結により価格が調査月の価格よりさらに下落するケースが多くなれば、薬価調査と頻回妥結後の市場価格との整合性が問われてくる。また、現在、価格決定に際しての当事者間の合意プロセスの前提条件が事実上「頻回妥結」であるため、医薬品の価値が変わらない中で断続的に価格が下落するといった状況が生まれている。このような「頻回妥結と薬価調査の整合性」と「頻回妥結と医薬品の価値の整合性」の二点について考えていきたい。

1.「頻回妥結と薬価調査の整合性」

 薬価改定が2年に1回の時は、薬価調査は原則として薬価改定時から一年半後の9月の市場価格にて行われる。この9月時点の医薬品の市場価格は、前年3月末に当事者(保険医療機関・保険薬局、医薬品卸)だけではなく第三者の関与(税務・会計)を経て正式な決算処理を終えた価格をベースに、翌4月から半年間、さらに医薬品卸と交渉をした結果の市場価格である。9月にこの価格を薬価調査することで、ほぼ正式な市場価格が補足可能となりその乖離率をもって翌年の薬価改定を迎えることができた。現在、中医協等で毎年改定の議論が行われている。頻回妥結が横行している現在の状況で、仮に毎年改定が実施された場合どのような事態が予想されるのであろうか?

 今日の医薬品の価格交渉においては当事者間(保険医療機関・保険薬局、医薬品卸)では、遡及値引きの交渉は行われておらず、あくまで期間を決めて価格を妥結する。仮に年度の薬価差を計算する時は、それぞれの期間の薬価差を足して再計算ということになる。妥結の期間であるが一年で妥結するケースもあるが、半年ごとに妥結するというケースも多い。未妥結減算制度の導入の副作用により、価格交渉の厳しい大手チェーン薬局を中心とした保険薬局では、未妥結による減算を避けるため「とりあえず」9月末に価格を決めるも、10月から4~9月分の「とりあえず」の価格も考慮した上での10~3月分の価格の交渉に入る事例も見受けられる。所謂「とりあえず妥結」問題である。

 10月からは4~9月の妥結水準とは大きく異なる「深堀り」された価格を求めての妥結交渉となる。ここで問題となるのが、9月の薬価調査時点での価格と、とりあえず妥結の価格から「深堀り」交渉を経た3月末での価格水準に大きな乖離があった場合である。薬価調査月以降の再妥結の横行により正式な市場価格が補足できず「市場価格を正確に捕捉してその乖離率を次回の薬価に反映していく」という薬価基準制度の大原則が揺らぎかねない事態になると予想される。

 2年に一回の薬価改定のときは、9月末の市場価格は一度決算年度を経ており、また二年間のうち一年半(期間の3/4)市場で流通している価格であることで、期中に頻回妥結が行われていてもほぼ正式な市場価格が捕捉可能となっていた。薬価基準制度の原則(正確な市場価格の捕捉)を堅持するという観点から今後、もし毎年改定が実施される場合には、あわせて薬価調査月以降の価格変更(頻回妥結)も原則は認められないといったことが付帯条件として必要になるのではないか?

2.「頻回妥結と医薬品の価値の整合性」について

 一般的には「商品の価値」が種々の原因で変わった時点であらためて商品の価値に基づいて当事者間で再検討し価格の変動が発生する。しかし、医薬品に限っては期中で医薬品の価値(薬価、仕切価、適応等)に変動がなくても、一旦妥結した価格が再度交渉され断続的に下落していく場合が多い。この原因の一つは頻回妥結を前提として交渉をすすめる保険医療機関・保険薬局サイドと、頻回交渉を見越した上で当初の値付けを高めに設定している医薬品卸サイドの両者の価格合意プロセスにある。

 医薬品卸は価格の出し惜しみをせず価値に見合ったベストプライスを最初から提示するように努める、保険医療機関・保険薬局は価値の変動がなければ期中の妥結は一回を前提とする交渉に努める等、「価値が変わらなければ価格も変わらない」原則に基づいて価格決定のプロセスを当事者全体で再検討することにより、より透明性の高い医薬品の価値に基づいた価格決定の実現が望まれる。

〔後記〕

 今回の提言をまとめる作業の中で、いくつかの極めて初歩的問題について自問した。それは、

[1]利益体系のあり方

であり、

[2]医薬品産業の枠組み

であった。

 利益体系について、私見を述べさせて頂ければ、

a.一次売差

b.リベート

という一般的な商取引における利益カテゴリー以外に、

c.アローアンス

という独特の利益区分が医薬品メーカ、医薬品卸間の取引の中でいつのまにか使われ出し、その存在がどんどん大きくなってきた過程がある。アローアンス(一般的には報償金、引当金)は、医薬品卸の販売価格(実勢価として薬価に大きく影響)以外の様々なコストをアローアンスという名目で補填するもので、その存在は、薬価の正確性に多大なる影響を及ぼしかねないということで、ガイドラインでも指摘している。

 「過度な優勢」「過度な劣勢」とは、医薬品メーカと医薬品卸の関係を表した1970年代の表現であるが、アローアンスという医薬品メーカー裁量権の拡大は、この表現が、今も尚この産業の基本構造であることを示しているのではないだろうか?

 医薬品産業をメーカー、卸、医療機関保険薬局の3極が構成しているものとするならば、健全な産業としては、正三角形が徐々に拡大していく図を想像できるはずである。各極が独立性をもって緊張感のある綱引きをしている状態である。正三角形が外へ外へ引っ張り合い拡大し、その外辺にある社会、消費者、患者がより多くのより良質なサービスを受けられるものでなければならないと思う。

 しかし、現実はどうなのか?

 これを想像していくことが、当研究会の使命であると思っている。

 私達が投じている小さな石をその波紋を受け、広範な議論を、特に産業論を期待したい。



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