厚生労働省医薬・生活衛生局長 樽見英樹
医療水準が向上し、文字通り人生百年が夢ではない時代になってきました。国民の健康への意識も一層高まり、在宅医療のニーズが多様化するなど、医薬品・医療機器等行政を取り巻く環境も大きく変容しつつあります。
そうした中で、昨年11月に医薬品医療機器等法の改正が成立しました。3月に法案を提出して以来、時間がかかってしまいましたが、この改正により医薬品・医療機器等行政は大きく前進していくものと期待しております。
先駆け審査指定制度、条件付き早期承認制度の法制化等、承認審査における予見可能性を高める制度改正を行いました。これにより、わが国の国際的な開発競争力を高めると共に、早期の医薬品等へのアクセスが可能となることが期待されます。また、医薬品等の添付文書の電子化により、医療現場で常に最新の情報を確認し、より安全・安心に医薬品等を使用していただくことができるようになります。
今後、在宅医療を受ける患者や、癌治療をはじめとした高度な薬学的管理を外来で受ける患者の増加が見込まれる中で、薬剤師・薬局が地域包括ケアシステムの一員として専門性を発揮するための機能強化を図る改正を行いました。
具体的には、継続的な患者の服薬状況の把握及び薬学的管理を行うことを薬剤師に義務づけることとすると共に、在宅医療などに他の医療機関と連携して対応する「地域連携薬局」と、癌治療等の専門的な薬学的管理に対応する「専門医療機関連携薬局」の認定制度を導入しました。
さらに、近年発生した不適切事案を踏まえ、許可等業者に法令遵守体制の整備を義務付けたほか、薬監証明制度の法制化や医薬品等行政評価・監視委員会の創設、血液法改正など多岐にわたる制度改善を行いました。
施行時期は改正項目により異なりますが、今後省令事項等について検討を急ぐと共に、関係者・自治体等に対して丁寧に説明を尽くし、改正法の円滑な施行に向けて万全を期していきます。
このほかにも、わが国の医薬品・医療機器等行政が直面する課題に積極的に取り組んでいきます。まず、国際的なハーモナイゼーションをリードしていくと共に、PMDAのアジアトレーニングセンターにおける活動に代表されるように、日本の医薬品等の高度な審査水準を各国と共有していくことがますます期待されています。
これにはPMDAの一層の体制強化、単なる人員の増強に限らず、専門性の強化といった質の観点も取り入れた体制の強化が求められます。