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◆「薬系大学が従来得意としてきた研究領域に、工学部や農学部などが次々に参入してきている」と、ある私立薬系大学の教授から聞いた。そうした事例は以前からあったが、最近になってその傾向に拍車がかかっているという
◆背景にあるのは薬学教育6年制の実施だ。6年制での薬剤師養成は、医療現場を意識した教育内容へとカリキュラムが変化した。その結果、「薬系大学の基礎的な領域の研究力が相対的に低下した」と他学部から認識されるようになった
◆製薬会社の研究職は他の産業に比べ待遇が良いとされる。「工学や農学の出身者をより多くそこへ送り込める。そんな打算もあって、薬学領域の研究を活性化させているのではないか」と、その教授は背景を語った
◆薬剤師の就職先が薬局と病院が中心となれば将来、6年制課程の卒業生を全て受け入れることができなくなるのは明らかだ。その人材を、製薬会社や製薬周辺の会社、さらには他の業界でどう活用するのか。第一期生の卒業を4年後に控えた今、具体的な展望が未だ明確でないことに危機感を覚えるのは、無季言子だけではないだろう。
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