医師の処方単位にバラツキ
「散剤」の剤形が処方時、調剤時など医療現場で重要なエラーの誘因になっていることが、古川裕之氏(金沢大学臨床試験管理センター准教授)が実施した調査で明らかになった。病院薬剤師、薬局薬剤師のほとんどが、医師の処方時に成分量や製剤量の違いなど、散剤の処方単位がバラバラである経験をしており、一般市民や看護師からも「散剤は服用しにくい」「投与しにくい」との声が多く上がったことから、古川氏は「散剤という剤形について再考する必要がある」と警告している。
調査は、2007年12月008年8月までに、病院薬剤師357人、保険薬局薬剤師200人、看護師525人、一般市民410人を対象に実施された。
散剤処方時の医師のエラー経験を尋ねたところ、病院薬剤師の90%、保険薬局薬剤師の81%がエラーを経験していることが分かった。経験した医師のエラー内容としては、病院薬剤師の88%、保険薬局薬剤師の76%が「成分量と製剤量の誤解」を挙げた。
また、散剤処方時の処方単位を尋ねた結果、「成分量」が27%、「製剤量」が26%、「不統一」が45%と、医療機関や医師の間でバラツキの大きいことが明らかになった。
一方で、薬剤師自身のエラー経験については、病院薬剤師の88%、保険薬局薬剤師の80%が「経験あり」と回答。散剤のメリットとしては、病院薬剤師の82%、保険薬局薬剤師の79%が「用量調節への対応が可能」を挙げた一方、デメリットとしては「識別性の悪さ」がそれぞれ87%、71%、「鑑査が困難」が76%、69%、「異物混入」が53%、54%となっていた。
医師にとってエラーが少ないと思われる処方単位を尋ねたところでは、病院薬剤師では「成分量」が70%、「製剤量」が10%、「同じ」が14%。保険薬局薬剤師では「成分量」が47%、「製剤量」が30%、「同じ」が17%との回答が得られた。
これに対し、薬剤師にとってエラーが少ないと思われる処方単位については、病院薬剤師では「成分量」が45%、「製剤量」が41%、「同じ」が12%。保険薬局薬剤師では「成分量」が23%、「製剤量」が60%、「同じ」が15%との結果だった。
一方、一般市民を対象に服用しやすい剤形を調査したところでは、「錠剤」が74%、「カプセル剤」が13%、「液剤」が8%、「散剤」が2%との結果で、逆に服用しにくい剤形を尋ねると、「散剤」が72%、「液剤」が13%、「カプセル剤」が11%、「錠剤」が2%との順で、一般市民は散剤を服用しにくい剤形と捉えていることが分かった。
さらに、看護師を対象とした調査では、患者に投与しやすい剤形として、「錠剤」が79%、「液剤」と「散剤」が8%、「カプセル剤」が4%に対し、投与しにくい剤形としては「散剤」が61%、「液剤」が21%、「カプセル剤」が12%、「錠剤」が5%との順で、看護師にとっても散剤は投与しにくい剤形と考えていることが分かった。
これを裏づけるように、看護師の83%が散剤与薬時に困った経験を持っており、実際に「患者からのみにくいと訴えられる」(87%)、「薬の中身が分からない」(55%)などの声が上がった。
今回の調査結果から、添付文書の用法・用量で成分量と製剤量が併記されているために混乱が生じている現状が浮かび上がった。また、医療機関や医師によって処方単位が異なることから、散剤の用量が誤解されており、一般市民と看護師は共通して「散剤」が最も服用(投与)しにくい剤形と考えていることが分かった。
古川氏は「これらに識別性と保存性の悪さ、異物混入のリスクを考慮すると、安全管理面からも散剤という剤形について再考する必要がある」と警告している。