国内主要製薬企業の2009年3月期中間決算(連結)が、6日までに出揃った。武田薬品、第一三共、アステラス製薬、エーザイの大手4社を見ると、円高と薬価引き下げの影響を受けたものの、第一三共を除く3社は主力のグローバル製品が国内外で売上を伸ばし、マイナス要因を吸収した。しかし、積極的な研究開発投資は継続され、既に大型買収等で巨額の資金を投入した大手4社は揃って二桁の営業減益を計上。グローバル化に向け、産みの苦しみに耐えている状況がうかがえる。
売上高を見ると、第一三共は、非医薬事業の切り離しと円高が大きく影響し、8・4%の減収。医薬品事業はグローバル製品のAII受容体拮抗剤「オルメサルタン」が好調に推移したものの、国内外で主力品が振るわず、4・6%減となった。
一方、国内トップの武田は、国際戦略製品の2型糖尿病治療薬「アクトス」が1・9%減となったが、子会社化したTAPの抗潰瘍薬「プレバシド」、ミレニアム社の「ベルケード」が大幅に伸長。円高と薬価改定の影響をカバーし、二桁の増収を確保した。
アステラスは、グローバル製品の免疫抑制剤「プログラフ」、過活動膀胱治療剤「ベシケア」が国内外で好調に推移し、2・0%の増収。エーザイも主力のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」の伸長に加え、買収したMGIファーマの制吐剤「アロキシ」、DNAメチル化阻害剤「ダコジェン」が売上に貢献し、9・9%の増収となった。
海外で売上を伸ばす各社とも、円高が大きなマイナス要因となったが、複数の主力品でカバーした武田、アステラス、エーザイの3社は増収を確保する格好となった。
しかし、営業利益は大手4社とも軒並み二桁の減益となった。武田薬品は、TAP、米アムジェン日本法人、米ミレニアムの子会社化など、大型買収に伴うインプロセス研究開発費の負担が大きく、67・9%減。アステラスも米アジェンシスの買収や新研究棟建設など、研究開発費が大幅に増加し、11・3%減となった。
第一三共は、後期臨床試験の進展に伴う研究開発費の増加に加え、大型化が期待される抗血小板薬「プラスグレル」の上市に向けた先行投資を行った結果、34・4%の減益。エーザイも米MGIファーマ買収によるインプロセス研究開発費に加え、海外での臨床開発の増加に伴い、さらに積極的な研究開発投資を進めたため、18・4%減となった。各社とも大幅な営業減益を計上しながらも、引き続き研究開発投資に積極的な姿勢は変わっていない。
こうして見ると、大手4社の09年3月期中間決算は、主力のグローバル製品が売上を伸ばす一方、積極的な研究開発投資で利益を減らす同じ構図となった。
通期は、引き続き円高の影響と研究開発費の負担増が大きく、アステラスと第一三共の2社が減収予想、エーザイを除く3社が減益予想となっており、将来の成長に向けた産みの苦しみが続く格好。エーザイは、MGIファーマ買収費用の負担を解消し、増収増益に転じる見込みで、反転攻勢の時期に入る。